日本地理学会発表要旨集
2021年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 277
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発表要旨
大阪府における中古戸建て住宅の立地とその多様性
*島田 広之
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抄録

日本では, 戦後の住宅難の時代より, 新築持ち家重視の風潮が存在し, 住宅の建て替えはスクラップ・アンド・ビルドによる供給システムが定着していた. しかし, 少子高齢化や住宅建設による環境負荷低減などの背景から, 新築中心のフロー型社会から,住宅ストックの活用によるストック型の社会へと転換していくことが目指された.2006 年に策定された『住生活基本計画』でも, その方針が明確化され,「多様な居住ニーズが適切に実現される住宅市場の環境整備」に関して成果目標・目標年次が設定された. また, 2010 年頃より空き家に関する議論が, 都市部においても取り上げられるようになり, 空き家問題の解決の方策の1 つとして中古不動産市場の活性化が挙げられている. それらを背景として, 既存ストック活用に関する研究は盛んになされている.

 先行研究における中古不動産市場活性化の目的を見ると, ①環境負荷軽減などを目的としたストック型社会への移行に眼を向けたもの, ②不動産市場の多様化による地域の多様性の確保や福祉的な目的のもの,③社会課題である空き家問題是正のための方策の3つに分けることができる. とくに, 不動産市場の多様化による地域の多様性の確保を目的とした研究では中古不動産の流通の実態, 特に情報の非対称性や海外との比較における制度上の課題を指摘し, 市場滞留期間や住宅属性を主な問題として価格や立地の妥当性を検討している. 地理学分野での, マンション研究では, 高齢者の移住や親族の近居の際に中古不動産が利用される傾向にあることがわかっている.市場における不動産の多様性をめぐる議論は価格の多様性と面積を中心に行われてきた。その一方で、不動産の諸要素やリフォーム等の選択肢を含めた空間の多様性に関する議論は行われてこなかった. また, その多様性の度合いや地域的な差異に関する詳細な議論は多くはない. 不動産市場全体における多様化がどのような要素を伴って展開しているのかについては, 十分に分析されてこなかったと言える.

 本発表では, 大阪府における流通不動産の多様化の実態とその地域的な差異について報告を行う. 大阪府は, 東京都に次ぐ中古不動産市場を有しており,とくに, 戸建て住宅が多いことが特徴である. 住宅情報サイトSUUMO 掲載の中古戸建て住宅の物件データを用いて, 流通不動産の多様化の実態について調査を行った. 筆者のこれまでの研究から, 大阪府では都市部, 北部地域, 南部地域といった地域ごとの地価や建築面積の違いによって, 住宅規模や間取りに差異が生じていることが明らかになった.

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