日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 219
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発表要旨
諏訪湖御神渡り経路の長期変遷に関する一考察
*長谷川 直子三上 岳彦平野 淳平小口 徹
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キーワード: 結氷記録, 諏訪湖, 御神渡り
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抄録

1. はじめに/研究目的・方法  長野県諏訪湖では冬季に湖水が結氷しその氷が鞍状に隆起する御神渡りと呼ばれる現象が見られる。これが信仰されてきたことにより、その記録が600年近くにわたり現存している(三上・石黒 1998, 石黒2001ほか)。御神渡りは元々神が御渡りになった跡と考えられており、その方向性から翌年の豊凶を占っていた。そのため、この記録には毎年の結氷・御神渡期日とともに御神渡りの起点と終点の地名が記載されている。  演者の一人(小口徹)は,この地名を特定し、その経路(方向性)を記録が存在する全期間にわたって調査した結果,その地点が時代によって変化していることが示唆された。そこで,諏訪湖結氷・御神渡記録のデータベース化の一環として,御神渡り経路の長期変遷に関する一考察を報告する。

2. 御神渡りの経路(走向)変化  古来,御神渡は諏訪大社上社の男神が下社の女神の元に通った道筋と言い伝えられてきた。御神渡に関する各種文書(御神渡注進録,御渡り帳,ほか)にも,「御下り」(渡り始め),「御上り」(渡り終わり)の地名が記録されている。これらの史料に基づいて,毎年の御神渡地点(両岸)の地名と場所を特定し,経路(走向)を推定した。 御神渡り記録の出典(および観測者)が時代によって異なるため(石黒2001),出典ごとに地名を特定して地図化した。御神渡りの記録は諏訪市教育会(1932)を使用した。湖の地名については、諏訪大社の現人神である諏方大祝家が1700年ごろに作成したと思われる地図(浅川1995、諏訪市教育会1932)などの古い地図に掲載されている地名を参考にした。湖面積の推定には金井(1973)を参考にした。図1と図2にそれぞれ、1397年〜1559年、1750年〜1871年の記録に基づいて図化した御神渡りの経路(走向)推定図と、当時の湖水面の環境を示す。これを見ると、1800年代になると御神渡りの発生場所が東側に偏っていることがわかる。」この変化要因として考えられるのは湖の面積の変化と温泉の湖内での湧出量の変化などであるが、特定は困難だと考えている。その一方で、このような変化が、演者らが中心的に興味を持っている当時の気候の復元にあたって、結氷や御神渡りの発生期日にも変化を与えている可能性もあり、合わせて検討が必要だと考える。

(本研究はJSPS科研費補助金(19K01155)を使用した。)

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