日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 211
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発表要旨
東海〜関東で発生する積雲列に対する地形効果
*鈴木 信康日下 博幸
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抄録

1. はじめに

日本列島太平洋側で見られる筋状ないし帯状の積雲列は、 地形の力学擾乱によって形成された収束線によって発生す る(Kang and Kimura, 1997, Kawase et al., 2005).その中でも 関東地方で発生する収束線は,東京湾から駿河湾までの広 範囲にわたって発生し,移動を伴うことが知られている. 発生域は河村(1966)や川瀬・木村(2005)によって風向・風速 に関係があるとされているが,その理由については分かっ ていない.本研究は,東海〜関東地方で発生する地形性収 束線の出現域ごとの風系の特徴と地形の力学効果について 明らかにする.

2. 研究手法

1992/93 年から 2011/12 年の 12 月~3 月の静止気象衛星赤 外データを用いて,中部山岳から延びる積雲列を出現域別 に東京湾型・相模湾型・駿河湾型の 3 領域に分類した.次 に ECMWF Reanalysis v5(ERA5)と JRA-55 領域ダウンスケ ーリング(DSJRA-55; Kayaba et al., 2016)の 2 つの再解析デー タを用いて,収束線出現時の一般風の風向・風速と,Dividing streamline height (??s)を調査した.最後に,領域気象モデル WRF と Cloud Model 1 (CM1; Bryan and Fritsch, 2002)を用い て収束線の数値シミュレーションを行い,収束線形性時の 流れ場の特徴と力学効果について調査した.

3. 結果

出現域別の 925 hPa 高度の一般風の風向・風速別の収束 線の出現頻度を調べた結果,東京湾での出現率は 15 ms-1 以 上の西北西〜北西風時に 25 %以上であるのに対し,相模湾 での出現率は 5~15 ms-1 の北西風で 40 %以上であった.ま た駿河湾での出現率は 5~10 ms-1 の西~北風で 10 %であるこ とから,収束線の出現域は風向と風速の両方で決まること が示唆される(図略).出現域別の Dividing streamline height を見ると(図 1),東京湾で出現する時は風速が強く,大気安 定度が比較的弱いことから??sは低い(1400 m 前後)が,駿河 湾では風速が弱く,大気安定度が強いことから??sは高くな っている(2400m).この結果とDSJRA-55データから算出し た地上風流線を見ると(図省略),Dividing streamline height に 対応した流れ場が形成されており,出現域毎に中部山岳の 障壁効果が異なることが示された.今後は WRF と CM1 を 用いた数値シミュレーションから,Dividing streamline height に着目した風速・安定度の感度実験を行い地形の力学効果 について詳細に調査する.

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