日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 311
会議情報

発表要旨
地理情報による水質の表現手法の試み
*沼尻 治樹大八木 英夫
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

はじめに

 地理学における無機主要成分の水質特性の表現は,ヘキサダイアグラム(シュティフダイアグラム)を用いて地図上に示されることが多い。一方,トリリニアダイアグラム(パイパーダイアグラム)では,水質の特性群を表現するのに適しているが,空間分布解析には不適な部分もある。また,水質に関わる水文分野におけるGISの活用はまだ途上にあるといえる。地図上での水質の表現も成分ごと,計測項目ごとに数値を色やシンボルで示すものは多い。しかし,無機主要成分は複合成分での空間解析が必要である。そこで本研究ではトリリニアダイアグラムの構造を基にカラーパレットを作成した。その色を使って地理情報として地図に重畳表示させることで従来の水質特性の表現より水質の空間分布の直感的な判読が可能か試行した。

考え方

 トリリニアダイアグラムにおけるキーダイアグラムは,4軸を持つ菱形の形状をしている。軸は百分率で表され,無機主要成分の内,2種類ずつ合算した当量値を軸に割り振ったマトリックス構造になっている。この4軸の内,3軸に,それぞれRGBの0から255までの数値を当てはめて作成したカラーパレットによる色として表現する(図1)。その算出されたRGB値を用いて,水質特性を表現する。

使用データ

 国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センターがwebで公開している全国水文環境データベースを利用し,本試みのサンプルデータとした。使用したデータは,関東平野(2005),富士山(2016)である。富士山(2016)では複数の時期の計測結果が公表されている。そこで,その調査結果の中から,2013年11月~12月に調査された河川水の計測結果(48サンプル)を利用した。関東平野(2005)の計測結果(155サンプル)はすべて地下水である。これらのデータには,地理座標による経緯度が記載されているので,この座標をそのまま位置情報として利用した。

データ処理

 地理情報データへの処理は,QGIS3のスクリプトとしてPython3で記述した。このスクリプトは地点名,座標値,各無機主要成分が記載されたCSV形式のファイルを入力値として,シェープファイル形式のGISデータと図1を基にした凡例画像データを出力するものである。

重畳表示結果

 この手法を使って,作成した点データを背景図と重畳表示させた。点データを凡例と比較しながら読み取る必要はあるが,水質の変化とその空間的な分布を直感的に判読することができた。水質の特性を地理情報化することもできたので,この点データを使った水質の計量的な分析にも利用が期待できる。

Fullsize Image
著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top