日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P006
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発表要旨
神奈川県逗子市・横須賀市における災害時要援護者避難支援の検討(1)
*三浦 エリカ小寺 浩二
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抄録

Ⅰ はじめに

平成30年に発生した西日本豪雨や、平成26年8月豪雨では、急傾斜地や、山地を切り開き大規模な宅地造成を行った箇所で、土砂災害が発生し、多くの犠牲を出した。特に、犠牲者の多くが高齢者であり、避難の途中で亡くなる人もいた。本稿では、自然地形と人工地形箇所に居住する「災害時要援護者」を対象に、避難方法の検討と、災害時のリスクを検討する。

Ⅱ 対象地域

対象地域は、神奈川県逗子市と、横須賀市(西部)の、宅地造成に伴う、地形改変が行われた箇所と、急傾斜地崩壊区域に指定されている個所とした。QGISを使用し、国土地理院の基盤地図情報「標高モデル」5mメッシュを基に、対象地域の標高を作成した(図1)。横須賀市(西部)では、山地や丘陵地が多く分布し、平地が少ないことが分かる。現地調査を実施した結果、傾斜地に住宅が密集して立地していた。逗子市では、横須賀市よりも緩やかな山地が分布している。横須賀市と同様に、現地調査を実施した結果、山頂付近でも、宅地造成が行われており、それに伴い、平坦化されている個所が多くあった。しかし、両地域ともに、車両の侵入が困難な地点も多く、災害発生時には、避難が困難になることも想定できる。

Ⅲ 対象地域における高齢者  

両地域では、人口の約30%が65歳以上であり、高齢化が進んでいることが分かる。避難を行う際、特に横須賀市では坂や階段が多いことから、徒歩での避難が想定される。 市では、「災害時要援護者支援プラン」が策定されており、あらかじめ指定された「近隣支援者」が、要援護者の避難を支援する方針である。しかし、高齢化が進む中で、支援者の認定も難しく、また、支援者が必ずしも避難を支援できるとは限らない点が課題となっている。  また、広島県で発生した豪雨災害では、団地や、高齢者施設、福祉施設において、床上浸水や、土砂崩れにより建物が全壊するなど多くの被害を出した。そのため、両市において、QGISを使用し、高齢者施設と団地をハザードマップに分布し、それを基に、立地箇所の災害時リスクを、現地調査を実施し検討を行った(図2)。その結果、土砂災害による被害よりも、地震災害において、建物に亀裂が入るなどの影響が及ぼされることが考えられた。

Ⅳ おわりに

今後は、高齢者の身体的特徴に考慮し、指定されている避難場所までの、避難経路や避難方法、支援を市と連携しながら検討を行っていく。

参考文献

押領司大輝,田村将太,田中貴宏,八木恒憲(2019):平成30年7月豪雨による建物被害の地理的要因に関する研究-広島県呉市を対象として-,54(3),1059-1065,都市計画論文集.

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