日本の国土の約3分の2は森林に覆われており、その主な資源の1つである木質バイオマスは多くの地域で古くから木材やエネルギー資源としてその利用形態を変えながら広く利用されてきた。特にエネルギー利用に関し、古くは薪炭が各家庭のエネルギーの主役であったがエネルギー革命によってその利用は激減した。しかし近年、再びカーボンニュートラルなエネルギー資源として発電や熱利用向けに木材チップ等の需要が増加している。このように木質バイオマスの利活用に関する環境が大きく変化する中で、それを機会として木質バイオマスを地域資源と捉え、地域活性化に取り組む事例が各地で見受けられる。その旗振り役は自治体であることが多く、民間企業がその役割を担っている事例はあまりない。
本研究では、栃木県における民間企業主体の木質バイオマスの利活用による地域活性化の取り組みに焦点をあて、それらが自立的に進展している背景や仕組み、要因等を明らかにするとともに、それら要因の他地域への横展開の可能性について評価することを目的としている。本発表では、当該地域における木質バイオマスの利活用に関する事例(中学校跡地を活用した製材工場/木材チップ工場/バイオマス発電所、バイオマス熱供給施設、養鰻場等)を紹介するとともに、それらが自立的に進展している要因を資源量、マテリアル(用材)、エネルギーの3つの観点から分析した結果について、現地の聞き取り調査結果と併せて報告を行う。