Ⅰ はじめに
新河岸川流域は、かつて水質悪化が顕著な地域であったが、近年は流域下水道や親水事業で水質が改善しつつある。しかし、狭山丘陵に位置する支流の上流部においては依然水質が改善していない地域も存在している。汚染源の特定について2020年12月より調査を実施し、水質を中心とした水環境の特徴を考察する。
Ⅱ 対象地域
狭山丘陵周辺で水質が悪化している河川を調査対象とした。柳瀬川水系の不老川上流部、六ツ家川上流部、砂川堀流域と目黒川と空堀川中流域の5ヶ所である。
Ⅲ 研究方法
例月調査として汚染源の特定のため2020年12月より2022年6月まで毎月12地点の調査を実施した。現地では、水温、気温、電気伝導度(EC)、COD、pH及びRpHを計測し採水して研究室にてイオンクロマトグラフを使用し、主要溶存成分の分析を行う。
Ⅳ 結果・考察
EC推移図(図1)では、六ツ家川上流の北野一般廃棄物最終処分場放流口(M1)で、流出水の2021年6月のECは1393μS/cⅿであった。2022年3月のECは493μS/cⅿであった。平均値は1017μS/cⅿである。この地点の2021年6月と2022年3月を比較するとECは1/3となり冬季に低い数値となっている。黒目川の降馬橋 (KR1)のEC平均値は245μS/cⅿと低い数値である。ここから100m下流の清涼飲料水工場排水放流口(KR2)のEC平均値は1893μS/cⅿであり非常に高い数値を示している。2022年4月は961μS/cⅿであり6月のECは2196μS/cⅿと再び上昇している。下流のよしきり橋(KR3)のEC平均値は494μS/cⅿであり工場排水は約1/4に希釈されている。砂川堀では、東永橋(S2)のEC平均値は840μS/cⅿである。2021年6月2354μS/cⅿに高い数値を示していたが2022年6月は728μS/cⅿと1/3に下がっていたが薄茶色の水が流れていた。工場排水が流れ込んでいると思われる。 pHは、空堀川の東芝中橋(K1)で2021年6月は8.2、2022年6月で8.4であった。下流の浄水橋(K2)は2021年6月のphは9.2、2022年6月も9.2であった。 黒目川の清涼飲料水工場排水放流口(KR2)の平均pHは8.3、2022年6月も8.3であった。変動があまり見られない。 東芝中橋の2022年3月は25.0℃、2022年6月の採水温は31.2℃でありと高い数値を示している。東芝中橋(K1)の脇に放流口があり、市内にある乳製品製造工場の排水である。黒目川の清涼飲料水工場排水放流口(KR2)のCOD平均は 12である。砂川堀では、東永橋(S2)のCOD平均値は10である。上流で工場排水の流入が原因と考えられる。
Ⅴ おわりに
六ツ家川上流では一般廃棄物最終処分場の浸出水がECに影響し、空堀川では中流域でEC,pHが乳製品工場排水の影響で負荷が高まっている。また、黒目川の中流域でも清涼飲料工場の排水の影響でEC, CODが高い数値を示している。継続調査を行い、主要溶存成分の分析結果を研究に反映させたい。
参 考 文 献
乙幡正喜・小寺浩二(2021):狭山丘陵周辺河川上流域の水質の変化とその要因について. 陸水物理学会第 42 回研究発表会(名古屋大会)講演要旨.