主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2022年度日本地理学会春季学術大会
開催日: 2022/03/26 - 2022/03/28
北陸地方は, フェーンが頻繁に発生することで有名である. 富山平野で発生する南風フェーン(以下, 富山フェーン) は夜間に吹き始める傾向があり, これは夜間に海風が止むからだと推察されている. 海外では, フェーンが夜間に吹き始める要因として風上の大気安定度の影響が提唱されている. 本研究の目的は, 典型事例を解析することで, 富山フェーンの吹き始めに対する(1)海風の影響を明らかにすること(2)風上の大気安定度の影響を調査することである. 富山フェーンは一般的に, (1)春に発生する, (2)日本海低気圧によって引き起こされる, (3)夜間に吹き始める, という特徴を持つことが知られている. この3つの条件を満たす事例を, 本研究の典型事例とした. 典型事例について領域気象モデルWRFを用いて数値シミュレーションを行った. 日中は, 飛騨山地の風上で混合層が発達するため, 大気が中立に近くなる. したがって, 山岳波が発生せず, おろし風が吹かない. また風下の富山では北寄りの海風が吹く. 夕方には, 風上の混合層が衰退し, おろし風が吹き始める. しかし, このおろし風は海風によってブロックされ, 富山までは到達しない. 夜間になると, 海風が止み, おろし風が富山まで到達する. このとき富山では, 地上気温が急上昇し, 地上風が増大する. 富山フェーンの吹き始めには, 飛騨山地の風上の混合層の衰退, さらに風下の海風が止むことが重要である.