日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 342
会議情報

外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康被害の 地理的研究
外国人散在地域を事例として
*岩間 信之中島 美那子浅川 達人田中 耕市佐々木 緑駒木 伸比古池田 真志今井 具子貝沼 恵美
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

1.研究目的

本研究は,X県北部に位置するA市(外国人散在地域)を事例に,外国にルーツのある子どもたちの成育環境と健康状態の関係を,地理学的視点から分析する。 近年,日本への定住を志向する外国人が増えているが,こうした動向を日本社会が十分認識しているとは言えない(いわゆる「顔の見えない定住化」の進行)。外国にルーツのある子どもたちの数も急増している。しかし,日本語学習支援を含め,様々な生活支援を十分に受けられない外国由来の子どもたちも多い。成育環境(ここでは家庭での教育や家族とのふれあい,食生活,生活習慣など)に起因するであろう被害(肥満や虫歯などの健康被害,発達障害など)も,多数報告されている。また,日本語での学習についていけずにドロップアウトする子どもも少なくない。多文化共生社会の構築が求められるなか,外国にルーツのある子どもたちの生活支援は,重要な課題である。 外国由来の子どもが健康的に育ち,また学習言語としての日本語を習得するためには,成育環境が重要である。しかし,外国人世帯では,両親が低賃金長時間労働に従事し,自宅を長時間不在にするケースが目立つ。こうした世帯では,同胞や行政,地域住民からの生活支援が必須である。ただし,すべての地域で十分な支援を受けられる訳ではない。 これまで,多文化共生に関する研究は,おもに外国人集住地域で進められてきた。しかし,外国人散在地域は「見えない定住化」がより顕著であり,同胞による支援も少ない。そのため,当該地域に暮らす子どもたちの成育環境は,外国人集住地域よりも総じて厳しいと予想される。なお,全国の地方都市の多くは,外国人散在地域といえよう。

2.研究方法

本研究の手順は以下の通りである。第一に,X県全域を対象に,外国にルーツのある子どもたちの実態と生活支援の地域格差を分析する。第二に,A市の協力を得て,3歳児健診データの個票を入手・分析する。当該データには子どもたちの健康状態や成育環境が記録されているため,健康状態と成育環境の関係性の定量的分析が可能である。第三に,A市に居住する多様な国籍の子どもたちや保護者に対し,インタビュー調査を実施する。これにより,子どもたちを取りまく成育環境の実態を把握する。なお,A市は工場の期間労働や飲食業に従事する外国人が多い地域である。

3.研究結果

研究の結果,例えば表1で示したような地域格差が確認された。その他の研究成果は,当日報告する。

著者関連情報
© 2022 公益社団法人 日本地理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top