1. はじめに
SfM技術の進展により,メッシュサイズが数mm-数cmの高精度な数値地表モデル(DSM)を用いた構造土の記載・観測が行われるようになった。曲線的な斜面で構成されるアースハンモックをDSMに基づき記載するためには,周囲との境界の抽出が問題となる。本研究では,帯広空港敷地内のアースハンモック分布地において作成した超高精度DSMの解析を行い,アースハンモックの外周境界の抽出を試みる。また,その地形的特徴を記載する。
2. 調査地と調査方法
調査地は帯広空港の滑走路西側に隣接する林内にあり,直径約2m,高さ約50cmのアースハンモックが密集している。測量調査は2019年5月に実施した。まず地表面を覆うササ等の植被をすべて伐採し,地上基準点(GCP)を20箇所設置した。GCPの座標はトータルステーションを用いて決定した。撮影にはデジタル一眼レフカメラを用い、長さ3mのポールに固定して、撮影範囲が重なるよう移動方向に連続して撮影した。撮影した 画像の解析にはMetashape Professionalを用い,5cmグリッドのDSMを生成した。DSMの解析には,ArcGIS 10.5および Quantum GIS Ver.3.20を用いた。
3. 調査結果
試行錯誤の結果,標高の二階微分であるラプラシアンフィルターによって,目視で判断されるアースハンモックの外周に近い境界線を得ることができた。ArcGISに実装されるラプラシアンフィルターの値は凸型地形で正,凹型地形で負の値となり,0はそれらの境界とみなせる(図1)。そこで,0を閾値として外周線を抽出した。この外周線は目視で判断されるアースハンモックの境界と概ね一致する(図2)。なお微細な起伏の影響を避けるため,DSMには先に平滑化処理を行っている。
調査範囲には合計12個のアースハンモックが含まれる。これらの地形的特徴として,南向きより北向きの側斜面で傾斜が急であること,外周線を楕円で近似すると長軸方向が南北に向くという特徴が見いだされた。こうした地形的特徴は,側斜面の方位によってアースハンモック成長時の動きが異なる可能性を示唆している。