日本地理学会発表要旨集
2022年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 538
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最上川流域の水環境に関する研究(1)
*山形 えり奈小寺 浩二
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抄録

 はじめに

 最上川は,山形県を流下する,幹川流路長約229 km(全国第7位),流域面積約7,040 km2(同9位)の一級河川である.当流域について,河川水質を明らかにする目的で行った調査の結果を報告するとともに,公共用水域のデータとの比較を行ったので報告する.

 研究方法

 2021年6月7日から10日に現地調査を行った.調査地点は本流支流を合わせ計53地点であり,現地では気温,水温,比色pH,比色RpH,電気伝導度(EC),パックテストによる化学的酸素要求量(COD)を測定し,採水を行った.また,環境省による公共用水域のデータのうち,1984年から2019年の生物学的酸素要求量(BOD)75%値の平均を算出した.

 結果と考察

 調査結果より,最上川流域全体の水質の傾向が分かった.

 本流のECは,101~167 µS/cmの間で推移した.特に,上流部の糠野目橋で167 µS/cmと高い値を示し,五百川橋101 µS/cmまで低下したのち中流部の村山橋で159 µS/cmと再び高い値を示した.支流のECは60~3075 µS/cmの値を示した.融雪水が多く流入する河川で低いECを記録し,置賜白川63 µS/cm,立谷沢川78 µS/cmであった.また,温泉水が多く流入する河川で高いECを記録し,須川3075 µS/cm,酢川810 µS/cm,蔵王川634 µS/cmであり,pHも低かった.

 CODは0~8 mg/Lであった.CODが高い河川は,吉野川8 mg/L,犬川7 mg/L,須川6 mg/Lであった.本流のCODは,上流域で0~1 mg/Lであったところ,吉野川および犬川の合流後の幸来橋で5 mg/Lと上昇している.

 また,公共用水域のBOD75%値は,0.41~13.74 mg/Lであった.BOD75%値が高い河川は,逆川13.74 mg/L,小牧川7.24 mg/L,沼川6.30 mg/Lであり,流域に分散して存在していることがわかった.

 調査結果とBODの空間分布を比較すると,数値の高い地点が一致しない場所があった.例えばCODが高い吉野川,犬川,須川は,BODは測定されていないか低い値である.公共用水域では測定されていない河川に,水質汚濁の可能性があること,およびBODだけでは評価が限定的であることが示唆された.このような河川が本流へ合流することで,本流の水質が悪化することが懸念される.

 おわりに

 今回,最上川流域の河川水質を,調査結果から概観した.今後,各イオン成分や他の項目間の関係性を究明し,流域の水質形成要因および水収支を明らかにしていく必要がある.

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