日本地理学会発表要旨集
2023年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: P024
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図書館の規模と住民の図書館選択の関係
宇都宮市立図書館を事例に
*橋爪 孝介
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抄録

Ⅰ はじめに

 住民の日常利用に供する市町村立図書館は,1つの大規模な中央館を核として,複数の中小規模の分館を配置し,あるいは移動図書館を運用することで図書館ネットワークを形成することが多い。中村・栗原(1997)は,住民全体の読書量のうち,図書館が受け持つ割合を図書館受持率と定義し,市部においては,小規模館はおおむね半径1km,大規模館はおおむね半径4kmの範囲で図書館受持率が10%を超えるとする利用圏域モデルを発表した。しかしながら,自家用車の利用が卓越する地域では,距離の制約が緩和され,最寄りの小規模館ではなく,遠方の大規模館を選ぶ傾向がみられる(河村ほか 2008)との指摘がある。

 以上をふまえ,本研究では,日本有数の自動車依存型の都市として知られる宇都宮市を事例に,複数の大規模館が選択可能である場合,住民はどの図書館を選択するのかを明らかにすることを目的とする。

Ⅱ 研究対象図書館と使用するデータ

 宇都宮市立図書館は,5つの図書館と17の生涯学習センター図書室等で図書館ネットワークを形成している。このうち,ネットワークの核となる図書館は中央図書館であるが,貸出冊数では中央図書館・東図書館・南図書館の3館はほぼ同数であり,宇都宮市域には3つの大規模館が並立する。市内には県立図書館や大学図書館も存在するが,本研究は宇都宮市立図書館のみ対象とする。

 本研究で使用するデータは,2021年度の宇都宮市立図書館の新規登録者である。同データは,町丁目別・世代別・登録館別に新規登録者数を集計したものである。

Ⅲ 結果

 以下,宇都宮市の16行政地区別に集計した結果を示す(図1)。

 中央図書館・東図書館のある本庁地区と,南図書館のある雀宮地区では,9割以上の住民が地区内の図書館で新規登録を行った。

 中規模館のある市北東部の上河内・河内地区では,地区内の図書館での登録が8割を超えたが,より規模の大きな東図書館や南図書館での登録者も一定数存在した。図書館がなく,生涯学習センター図書室のみが設置されている地区では,地区内にある図書室や最寄りの中規模館での登録者よりも,最寄りの大規模館での登録者の方が多い傾向がみられた。

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