日本地理学会発表要旨集
2023年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 414
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積雪深分布からみた北陸地方の大雪の特徴
*須藤 大晴
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抄録

1. はじめに

近年、積雪地では年により積雪の多寡が二極化している。北陸地方では度々大雪に見舞われ、公共交通機関や物流がストップするなど大きな被害が発生している。一方で寡雪の年は、スノーリゾート開園期間の短縮や、春先の融雪水の不足による農業用水の枯渇など、様々な影響が見られる。筆者はこのうち大雪年に注目し、大雪をもたらす大気の要因や大雪の分類を明らかにしていく。

2. データと研究手法

研究対象地域は北陸地方(福井、石川、富山)の3県とする。日最大積雪深量について、深石(1961)をもとに、平野の代表として金沢を、山地の代表として白山河内を選び、この2地点のどちらかで日最大積雪深量が20cm以上増加した日を大雪日と定義した。その結果、2018年1月から2023年3月までで大雪日と判定された36日について、積雪分布から山雪型・里雪型の判別を行い、大気状態について検討を行った。 使用したデータは、①農研機構メッシュ農業気象データの1kmメッシュ積雪深データ、②気象庁が作成した天気図(地上天気図、高層天気図)と1kmメッシュの積雪平年値メッシュデータ、AMeDAS積雪深、③ECMWFによるERA5(0.25度メッシュ1時間毎)の海面水温、地上2mのUV風速、850hPa面の気温とUV風速である。

3. 山雪型と里雪型の積雪深分布と大雪の発生要因

大雪日の積雪深の分布を図化し、山雪型と里雪型の判別を行った結果、山雪型は28日、里雪型は8日となった。この分布図から山雪型と里雪型の積雪深の比較を行った。 山雪型の日には、山地では平地より積雪深が深く、平地では雪が少ないことが特徴的である。天気図を見ると強い冬型の気圧配置になり、北西の風が強く吹くときに多い。 一方で、里雪型の日では、山地と平地であまり差がなく、広範囲で大雪になっている。日本海の海面水温が平年値よりも高く、そこに強い寒気が入ってくると大雪になる。特に、日本海周辺に低気圧があり、等圧線が袋型で間隔が広くなり、弱い西風になったときに、平地で大雪が降る。こうした気圧配置のときには、850hPa面でJPCZが形成されやすい。

本研究では、従来の気象官署やAMeDASデータより空間分解能の高い1kmメッシュ積雪深データを用いたことにより、山雪型と里雪型の積雪深分布の違いとその発生メカニズムを明らかにすることができた。

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