日本地理学会発表要旨集
2023年度日本地理学会春季学術大会
セッションID: 318
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デリー大都市圏郊外都市ファリダバードにおける住宅開発
*由井 義通
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抄録

1.デリー大都市圏の発展 

1990年代以降,インドでは急速な経済発展に伴い,急激な都市化が進行している。1980年代に約20%であった都市人口率は,2021年には約35%に高まっている。インドにおける都市発展について、Dupont et al. (2000)やDupont(2011)は,外資導入による経済発展と社会-空間的二極化(中間層の増加とスラムの増加)ととらえた。このような農村を飲み込むような激しい都市化の状況下で、経済成長を牽引する「中心」は、単体の大都市よりも、大都市を中心に様々な階層の都市群が結合し、都市集積と産業集積を合わせたより広域の新しい経済空間としてのメガ・リージョンが形成されている(岡橋・由井、2018)。 メガ・リージョンの核となる大都市圏の郊外では、経済成長の中で登場してきた新中間層や富裕層向けの集合住宅を主とした住宅開発と大型ショッピングモールなどの商業開発が進められている。

 経済成長による所得水準の向上に伴って郊外地域での生活はミドルクラスのステータスシンボルとなっており、消費行動が住宅へ向かってきている。インドの都市住民は、生活水準の向上を具現化する耐久消費財として住居を考え始めたと考えられる。

本研究は、デリー大都市圏の郊外核として発展するファリダバードを事例として,住宅供給の実態を調査することによってインドにおける大都市圏郊外地域における都市開発の実態と課題を明らかにすることを目的とする。

2.研究対象地域

 ファリダバードはデリー中心部から南東約30kmの郊外地域に位置する都市である(第1図)。ファリダバードでは1950年代にハリアナ州ハウジングボードによる住宅開発が始まり,1961年に約6万人であった人口は2001年には約106万人となり、2021年には約140万人となった。ファリダバードでこのように人口が急増した原因は、開発が先行したグルグラムやNOIDAに比べて住宅価格が安価で、デリーメトロの延伸計画が発表(2015年に延伸工事完了)されたことから住宅開発が活発に行われたことによる。なかでも「グレーター・ファリダバード」と呼ばれている東部では住宅開発が激化している。

3.ファリダバードにおける住宅開発

 ファリダバードにおける住宅開発は、大規模な不動産資本による開発が中心であったグルグラムやNOIDAとは異なり、中小のローカル資本が中心となって行われている。供給された集合住宅の居住面積は130~180㎡でグルグラムより狭く安価な物件が多い。住宅開発が先行するグルグラムとの大きな違いは、富裕層やアッパーミドルクラスを対象としたグルグラムと比較して、ファリダバードで供給される住宅はアッパーミドルクラスやミドルクラスを対象とした販売価格帯が多く、インドの住宅供給が大衆化しつつあることを示している。

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