日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 438
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非大都市圏におけるベトナム人定住の経緯
宮崎県における事業所経営者を事例に
*福山 一茂
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抄録

問題の所在

 従来の地理学におけるエスニック・ビジネス研究では大都市の集住地域や大都市圏における事業所の機能や立地に重点が置かれてきた(片岡2004, 2005, 2015; 金2016; 粉川2017).しかし,事業所経営者の生活者としての側面はあまり検討されてこなかった.また,2010年代後半以降のベトナム人の増加は非大都市圏において顕著であるが,非大都市圏のベトナム人について扱った研究は地理学においてはみられない.

 非大都市圏の多くの地域では技能実習・特定技能制度により居住するベトナム人がその地域の外国人割合の上位である.非大都市圏の自治体や外国人を雇用する企業では両制度の法改正による大都市圏への人材の流出が懸念され,地域に定住してもらうことが課題となっている.しかし,その地域に定住するに至ったベトナム人の事情や意思決定のプロセスが十分に考慮されているとは言いがたい.

目的

 本発表では,ベトナム料理店や食材店の経営者をすでに定住しているベトナム人の事例のひとつと位置づけ,この人びとに焦点を当てる.この人びとはどのような経緯でベトナム人集住地域が存在していなかった地域に定住するに至ったのであろうか.本発表では,経営者の生活者としての側面にも留意しつつ,経歴についての語りの分析を分析する.それを通じて,非大都市圏におけるベトナム人の定住の実態を明らかにするとともに,定住に向けた政策的インプリケーションを提供することを目的としている.

調査地域と方法

 宮崎県内に立地する4店舗において経営者やその子を対象として2024年6月にインタビューを行った.なお,宮崎県に住むベトナム人は2013年からの10年間で70人から2775人に増え,増加率は全国で最も高い.このことを踏まえ,宮崎県で調査を行った.

結果 インタビューをもとにした経歴を下に示した.名前はいずれも仮名である.この人びとは経済的な要因だけではなく,家族の事情や友人関係によっても定住,開業に至っていることが明らかになった.詳細な語りの分析や考察は発表時に提示する.

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