2024 年 64 巻 1 号 p. 26-38
本研究は,修復的司法における被害者・加害者間の対話に対する被害者の満足/不満足の表明が,一般市民が加害者に求める量刑にどのように関連するかを検討することを目的とした。そのため,被害者の(不)満足表明から加害者への量刑に直接至る過程,被害感情の宥和を経由し加害者への量刑に至る過程ならびに,加害者の反省および特別予防の必要性を経由して加害者への量刑に至る過程から成るモデルを設定し,犯罪の重大性が高い条件と低い条件で検討した。被害者の(不)満足表明×重大性高低から成る4条件について,562名のデータを用いて分析を行った。分析の結果,被害者が不満足よりも満足を表明する場合,一般市民は,被害感情が宥和していると知覚することについては重大性の高低を問わず支持されたが,このような宥和の知覚が加害者への量刑を軽くするということについては重大性の高低を問わず支持されなかった。特に,低重大性条件においては被害者の満足表明が加害者への量刑を重くするという結果が示された。一方で重大性の高低を問わず,加害者が反省していると知覚することが,加害者に求める量刑を軽くすることが示された。