主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2024年日本地理学会秋季学術大会
開催日: 2024/09/14 - 2024/09/21
はじめに 近年,コンテンツツーリズムが注目されている.しかしながら,COVID-19の流行により,観光業も打撃を受けた.コンテンツツーリズムの中でも,アニメ聖地巡礼は,コロナ打撃からの回復の希望であると同時に,地方への観光誘客の強力な武器であるとされる.また,テレビやSNSでもアニメ聖地巡礼が取り上げられ,世間から注目を集めており,特に地方経済へもたらす影響は計り知れない. コンテンツツーリズムの研究は,アニメの舞台となった地域,聖地の成り立ち,地元住民等に着目している(岡本 2019;佐藤 2009;鈴木 2010)が,それらについての持続性を議論した研究は管見の限り少ない. 静岡県沼津市は,アニメによる観光振興において顕著な事例であるが,コンテンツツ開始から5年以上経過した時点で,持続性を議論した研究はない.そのため,本研究では,静岡県沼津市を事例に,アニメファンの実態や評価,地元住民や市の取り組みを明らかにし,アニメ聖地の持続,衰退要因を明らかにする.これにより,今後の沼津市の観光ビジョンを検討できる材料になるだろう.
Ⅱ.研究方法 アニメ聖地巡礼者(以下、観光客),沼津市役所,沼津駅周辺と沼津港の商店街の商工会等にインタビュー調査を実施する.調査内容としては,観光客には,訪問目的,訪問場所,滞在日数,訪問回数,リピーターの訪問目的の変化等から,アニメ聖地持続要因を明らかにした.市役所や商工会等のインタビュー調査については,現在までの取り組みとその影響から,アニメ聖地としての持続要因を明らかにした.
Ⅲ.結果および考察市役所については,夏祭り等のイベントと継続的にコラボすることで,リピーター獲得に貢献している.商店街については,コンテンツツ開始当初から現在まで,継続的な取り組みを行っている.例えば,購入金額に応じて景品をプレゼントする企画や回遊性を高めるためにスタンプラリーを実施することで,リピーターを飽きさせない取り組みを実施している.観光客については,リピーターが多く,作中に登場した場所へ訪問している.また,作中には登場しなかった店舗や周辺の場所へも訪問することが明らかにされた.これが,アニメによる観光振興が持続している要因であると考えられる.以上のことから,3者がお互い上手に連携することで,アニメ聖地として持続していることが明らかになった.
参考文献岡本 健 2019. コンテンツツーリズム研究.福村出版.佐藤智香2019.沼津市におけるコンテンツツーリズムの取組~ラブライブ!サンシャイン!!を事例に~.2019年度駒澤大学地理学科卒業論文.佐藤壮太・渡辺隼矢・坂本優紀・川添 航・喜馬佳也乃・松井圭介 2018. リピーターの観光行動からみたアニメツーリズムの持続性-茨城県大洗町「ガールズ&パンツァー」を事例として.人文地理学研究38:13-43.鈴木晃志郎 2010.メディア誘発型観光現象後の地域振興に向けた地元住民たちの取り組み:飫肥を事例として.観光科学研究:3,31-39.