日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: S102
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世界地誌学習における考察のプロセス
東南アジア・オセアニア
*井田 仁康
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抄録

世界地誌学習の課題 地誌学習は、日本の地理教育の学習内容の中核であった。地誌、特に世界の国々を扱う地誌は、子どもたちに世界への興味をわきたて、世界の情勢を知るうえでも基本的な知識を提供してきた。一方で、こうした子どもたちに興味を喚起する知識の提供は、知識の押し付けとも捉えられ、暗記科目として批判の対象ともなっていた。さらに、世界的に地理学習が、知識の提供から探究へとシフトし、資料から考察することが学習として重視されるようになった。すなわち、子どもたちの受け身の学習から能動的な学習への転換が世界地誌学習にも求められるのである。 探究としての学習にするためには、子どもたちが主体的に学習に取り組み、地理的見方・考え方といった観点から自ら知識を構築していく、すなわち考察のプロセスが必要である。その考察のプロセスを、東南アジア・オセアニアの地誌学習において提案したい。 考察のプロセスに基づいた地誌学習の流れ 考察という用語は多岐に解釈できる。本稿では、課題を設定し、その課題を地理的な見方・考え方に着目して、探究していくことを考察と定義する。さらに、学習の流れのプロセスも、考察のプロセスとして含める。すなわち、考察のプロセスは、課題把握、資料収集、分析・解釈、価値判断・意思決定、参画といった学習のプロセスと、地理的な見方・考え方といった地理としての思考の観点を含んだものとなる。さらに、世界地誌学習を世界の地域区分から始めることにより、多角的・多面的な世界像を構築できると考える。考察のプロセスに基づいた地理学習の流れは、学習のプロセス、学習内容、着目する地理的な見方・考え方から、①から⑥に整理することができよう。 3.考察のプロセスに基づいた地誌学習 まずは、導入的な役割として、①の世界の地域区分をおこない、何を指標とするか(何を目的とするか)で地域区分が異なることに気づかせる。貿易、地域協力という観点からは東南アジアとオセアニアを1地域としてみることができる。②東南アジア・オセアニアの地域構造の変化を「場所」という観点から明らかにし、探究すべき課題をみいだす。③課題解決のための資料を収集し、④産業構造が変化した過程やそれを可能にした要因を分析・解釈し、⑤地域の変容という観点から課題の解答をみいだし、今後を展望するとともに⑥東南アジア・オセアニア地域の特性を把握し、自分たちとのかかわりを考察する。こうしたプロセスの授業で世界地誌を学習することも必要となろう。

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