保険学雑誌
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【査読済み論文】
規制緩和後のわが国損害保険産業の集中度と規模の経済
―事業費率関数を用いたパネルデータ分析―
柳瀬 典由
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2007 年 2007 巻 597 号 p. 597_1-597_30

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抄録
わが国損害保険産業は,1998年の実質的な料率自由化の後,大型合併など,業態内統合を短期間に経験してきたが,こうした動向は今後も続くのだろうか。この点を議論するためには,規制緩和後になぜ,業態内統合が進展するのかという点を説明しなくてはならない。そこで,本研究では規制緩和後のわが国損保産業の集中度を測定するとともに,同じ期間の個別企業レベルのデータを用いることによって,わが国の損害保険産業における規模の経済について実証的に検証した。分析は,保険引受に関する事業費,損害調査費,代理店手数料など事業費の区分別,ならびに保険種目別に行った。実証分析の結果,一貫して規模の経済が確認されたが,それが働く程度については,保険種目,事業費の範囲によって異なった結果が得られた。このことは,今後の業態内統合が,企業全体としてではなく,保険種目や業務別の統合によるほうが,費用の節約が期待できるということを示唆している。
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© 2007 日本保険学会
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