日本地理学会発表要旨集
2024年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 815
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常時微動計測で把握した小平市内の窪地の地下構造
*小荒井 衛桑森 勇多先名 重樹
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抄録

東京都小平市内の武蔵野台地には、深さ1~3m程度の窪地が存在する。窪地の成因については不明な点が多い。成因を明らかにするために、常時微動を窪地の中や外側など24地点で計測し、地下のS波速度構造を把握した。地下の地質断面が明らかにされている「小平市ふれあい下水道館」で常時微動計測を行ったところ、立川ローム層と武蔵野ローム層の境界深度がS波速度200m/s付近で速度が変化する深さに一致し、武蔵野礫層の上端の深度がS波速度300m/s付近で速度が大きく変化する深さに一致した。そのため、他の常時微動計測地点でも、上記の条件を満たすものと推定して、計測地点の武蔵野礫層上端の標高(深度)、武蔵野ローム層と立川ローム層の境界の標高(深度)を求めた。その結果、武蔵野礫層の上端の標高は調査地域の西端で約75m、東端で約65mと変化しており、常時微動で求めたS波速度変化部の深さが深さの15%程度の誤差があるので、特に窪地の部分で特に深いという訳では無かった。そのため、陥没などの構造的な要因でこの窪地が形成された可能性は小さいものと考えられる。一方、武蔵野ローム層の厚さは窪地の周辺と窪地の内部とで2m以上の違いが認められ、有意に窪地内でのローム層厚が薄いという結果であった。また、立川ローム層の厚さについては、窪地の中と外とで有意な差は認められなかった。この結果から判断すると、武蔵野ローム層の堆積時に窪地で湧水があり堆積したローム層を流したために武蔵野ローム層の堆積が窪地内や出口の谷地形で周辺よりも薄くなり、立川ローム堆積時には湧水も無くなり、窪地の内外でローム層の厚さに大きな変化が無くなったものと推定できる。

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