シンポジウム開催の背景と趣旨 グローバル化や環境変化が急速に進む現代、地球的課題解決のための資質・能力のさらなる充実は、世界共通の喫緊の課題である。学習指導要領では、思考力・判断力・表現力といった資質・能力が特に重視され、学習指導要領解説では、国際連合における持続可能な開発のための取り組みを参考に、生徒自身が地球的視野で考え、様々な課題を自らの課題として捉え、身近なところから取組み、持続可能な社会づくりの担い手となることにつながる教育をもとめている。このような教育は、ESD(Education for Sustainable Development)、つまりは持続可能な社会の創り手を育む教育といえ、学習指導要領でもESDが求められているといえる。一方で、小学校から高等学校まで各教科等で段階的に持続可能な社会づくりの能力を育成することが重要であるものの、効果的に行われているとはいえず、学習指導要領などでも小学校から高等学校までの一貫した持続可能な社会づくりの方略については示されていない。 そこで、こうした持続可能な社会づくりの能力の育成をめざすために、地理教育において必要な教育内容を小・中・高までの一貫したカリキュラムを念頭において討論したい。
本シンポジウムの流れ 上記の趣旨を受けて本シンポジウムは以下のように進めていく。総合司会:由井義通(広島大)・森本泉(明治学院大)開会挨拶・趣旨説明:井田仁康(筑波大・名誉)報告: 吉田和義(元創価大):小学校社会科におけるフィール ドワークと地図学習の課題 村山朝子(茨城大・名誉):小・中社会科における「地誌」学習の課題と展望 浅川俊夫(元東北福祉大):「地理総合」の現状と課題―担当経験者を対象とした実態調査の結果報告― 伊藤直之(鳴門教育大):地球的課題解決を見据えた地 理授業をつくる教師の育成 5.中澤高志(明治大)・:地理教育の社会への実装コメント(指定討論者):1.小関祐之(文科学省・国立教育政策研究所):学習指導要領作成の立場から2.吉田剛(宮城教育大):地理教育の立場から 質疑応答・パネル討論
本シンポジウムで明らかにしたい課題と展望 本シンポジウムでは、フィールドワークや世界地誌学習における小学校、中学校の課題から、それを受けての高等学校「地理総合」の実施状況の分析、さらにはこうした小学校・中学校・高等学校における地理学習をふまえた大学での地理教育(特に教員養成)、そして学校教育で育成された地理に関する資質・能力がどのように社会実装できるかを報告し、地球的課題を解決のための資質・能力の育成という観点から小学校から社会にでるまでの地理教育の一貫性の課題を明らかにしたい。そのうえで、それぞれの学校種でどのようにそれらの資質・能力をスパイラルに発展させ、社会をよりよく変革させる資質・能力であるAgencyを育成し、持続可能な社会を構築する人間の育成およびWell-beingを達成の中核となる地理教育をめざしたい。