日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会秋季学術大会
セッションID: 322
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夏期の関東地方およびその周辺の高・低湿時における対流性降水出現の時間的特徴
*澤田 康徳
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抄録

目的:夏期の関東地方における降水特性に関し,都市化の進展や気候変動の関連から,強雨の増大傾向が指摘されている.弱雨については,乾燥傾向を示す都市は雨滴蒸発と関連して周辺より降水頻度が小さいこと,凝結核の増大から頻度が高いといった乾湿環境や降水粒子から異なる傾向が指摘されてきた.一般的に,弱雨は,都市や郊外といった場所に限らず降水全般における割合は大きい.乾湿環境が降水特性に寄与するのであれば,都市内外に限定されず乾湿状況により降水出現に差異が生じる可能性があろう.本研究では,夏期の関東地方とその周辺を対象に,高・低湿時における対流性降水出現の時間的な特徴を示す.

資料・方法:資料は,降水量,日照時間,乾湿状況(気温,相対湿度,水蒸気圧)に関して,関東地方周辺における気象台・測候所など(23地点)の1時間値(1990~2024年,7・8月)を用いた.欠測は,最大で0.5%であり全地点対象とした.夏期晴天(領域平均日照時間≧5時間)の午後(13~24JST)に出現する降水を対流性降水とみなした.各地点の降水出現日のうち12JSTに降水出現していない日について,12JSTにおける平均相対湿度以上を高湿時,平均未満を低湿時とし,その日の降水を主な対象とした.

結果:各降水強度階級において,降水出現頻度割合と降水時から非降水時の要素に関する平均値の差との相関係数は,弱雨(0.5~1.5mm/h)で相対湿度と負の相関を示し,降水時と非降水時の差が大きいほど出現頻度割合が小さい.気温や水蒸気圧も相関が認められる.また,強雨(21mm/h~)で相対湿度の差と正の相関を示し,降水時と非降水時の差が小さい高湿な地点ほど出現頻度割合が小さい(表1).弱雨は,非降水時の相対湿度が高いほど出現頻度割合が大きかったことから,降水出現前12JSTの平均湿度に基づき,I低湿(51.1~62.3%)地点,II中湿(62.4~69.9%)地点,III高湿(76.3~81.3%)地点に類型化した.I低湿地点は夏期高温域,II中湿地点はIの周辺,高湿地点はI・IIの外側に位置する(図1凡例参照).全降水出現割合の時間変化(図1a)では,I低湿地点において,割合の大きい時間帯が高湿時は低湿時より早い.中湿・低湿地点においては,時間変化の振幅が小さいものの,早い時間帯(13~14JST)の割合が高湿時に低湿時より大きい.降水開始時の出現頻度割合(図1b)は,全降水(図1a)における傾向がより明瞭であり,I低湿地点は高湿時の方が低湿時より出現頻度割合が大きい時間帯が早まっている.高湿時と低湿時の弱雨出現頻度割合の差と平均湿度(図2)には,降水開始時および降水開始時後で,負および正の相関が認められる.弱雨頻度は,降水開始時では低湿な地点ほど高湿時に低湿時より高く,降水開始時後では,高・低湿時で同等もしくは高湿な地点ほど高湿時に高い.高湿時は,弱雨が出現しやすい場が形成され,若干ながら降水出現時刻の早まる可能性が示唆される.

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