日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 809
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大阪都市圏における対流性降水に対する都市の影響評価
*青田 優希日下 博幸
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抄録

はじめに

都市化は対流性の降水に影響を与えると指摘されている。特に海、山地に隣接する都市が降水に及ぼす影響についての研究も多く行われている。しかし、大都市を有し、海、山および都市が密接している地域においての現実実験は少なく十分ではない。そこで、本研究の目的を大阪の降水についての数値実験を行い、対流性降水に都市が及ぼす影響について明らかにすることとした。

手法

本研究はWRFを用いたアンサンブルシミュレーションを実施して、都市化が降水に及ぼす影響を評価した。対流性降水が発生しやすい事例に対し、2種類の初期値・境界値を含む合計640事例のアンサンブルシミュレーションを実施して現実の土地利用を用いたCTRL実験と大阪都市圏の土地利用を改変したNOURB実験の結果を比較することで、都市化が降水に及ぼす影響を評価した。

結果および考察

CTRL実験とNOURB実験の結果を比較して,都市化による降水量の変化を確認する。CTRL実験では降水量が山岳域で多く,平野部では少ない傾向にあった。NOURB実験でも同様の傾向が確認されたものの,大阪周辺の降水量に変化がみられた。図1はCTRL実験−NOURB実験の降水量の差分であるが,降水量の変化がウィルコクソンの順位和検定において有意水準1%で統計的に有意な領域のみを示している。図1を確認すると,大阪の中心部よりやや東側で有意に降水量が増加しており,大阪の北側と南西の山岳部で有意に降水量が減少していた。また,その他の領域における降水量の変化は有意水準1%で統計的に有意な変化ではなかった。以上のことから,大阪の都市化は都市部で降水量を増加させ,一方で周囲の山岳部で降水量を減少させると言うことがわかった。これらの要因として以下の二つが挙げられる。 都市による顕熱フラックスの増加が混合層高度を上昇させ,対流を強化した。 都市による熱的局地循環が海風の収束域を変化させ,水蒸気を都市側に輸送した。

結論

WRFを用いた対流性降水が発生しやすいに対して2種類の初期値・境界値を用いた640事例において,アンサンブルシミュレーションを実施してCTRL実験と土地利用を改変したNOURB実験の結果を比較することで,都市化が降水に及ぼす影響を評価した。結果として,都市化により降水量は大阪周辺で増加,都市の周囲の山間部で減少した。また,大阪の中心部からやや東での降水量の増加と大阪の北および南西での降水量の減少については有意水準1%で統計的に有意な変化であった。降水量の変化は都市化により地表面顕熱フラックスが増加による混合層高度の上昇による大気の不安定化と,気圧の低下による都市部への水蒸気輸送の強化を引き起こし,大阪での降水量の変化をもたらした。

謝辞

本研究はJSPS科研費JP24K07130の助成を受けたものです。

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