抄録
本報告は,大規模災害からの復旧・復興期に「何を」「いつごろ」実施すべきかに関する人々の時間感覚である「発災からのタイムライン(Post-Disaster Timelines,以下PDTs と略記)」について,愛知県において実施された先行研究の成果を踏まえて,同様の調査を日本国内の他地域(三重県と高知県)においても実施し,愛知・三重・高知の3 県のPDTs の比較分析を行ったものである。その結果,愛知県においては,三重県や高知県と比べて災害発生後の様々な社会活動が,全般的により早期に実施すべきとされることがわかった。また,愛知県においては他県と比べて住民の属性によるPDTs の差が大きいことも明らかとなった。この理由としては,愛知県の産業構造が日本経済全体と密に結びついていることが影響していることが示唆された。3県を比較した際には,地理的に隣接している愛知県と三重県のPDTs が似ているのではなく,むしろ,三重県と高知県のPDTs が似ていることがわかった。以上は,複数の都道府県にわたるような広域災害の発生時に,各都道府県のPDTs の特徴を考慮しながら復旧・復興プロセスを進めていく必要性を示唆するものである。