主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2025/03/19 - 2025/03/21
岩石ワニス(以下ワニスと略称)とは,岩石や考古学的遺跡の表面で認められる暗色の被膜で,おもに高温・乾燥した地域で発達している。本研究では,西オーストラリア州バラップ半島に発達するワニスの色彩と表面硬度を計測し,両者の関係を分析した。半島は,インド洋に面した西オーストラリア州西岸に位置する。半島は標高132m以下の丘陵からなり,表層部が長径2~3m以下の岩塊に覆われる。主な地質は,2990Maのダンピア花崗岩体に2725Maに貫入してきた斑れい岩と文象斑岩である。斑れい岩は半島の東部,文象斑岩は西部にそれぞれ分布する。半島の気候環境は年平均最高気温32.5℃(1993~2020年),年降水量324.6mm(1991~2020年)である。
色彩は土色計を用いて計測した。計測はともに晴天日の2019年3月19日にDeep Gorge(以下DG),3月20日にHappy Valley(HV)にある長径約1mの岩塊で実施した。DGの岩塊ではワニス発達部,HVのそれではワニス発達部に加え,岩塊表面が剥げ落ちた部分,及び岩塊内部の未風化部で計測した。計測はCIE L*a*b*表色法で計測し,色彩変化を分析するため,未風化部の色彩(L*0, a*0, b*0)を基準として色差(ΔE*Lab)を求めた。岩塊表面の硬度は,エコーチップを利用して,色彩計測と同じ期日に同一岩塊を対象に計測した。一般に,岩石表面のコーティング,case hardeningでは強度の増加が指摘される。しかし,計測したワニスの発達する岩塊表面の平均硬度は,新鮮な未風化部のそれより約40~54%も低いことがわかった。また,硬度と色差との関係は,両者に強い正の相関があることが示された。これは,今後岩塊表面の強度低下とワニス形成速度との関係性を検討する鍵になるだろう。