主催: 公益社団法人 日本地理学会
会議名: 2025年日本地理学会春季学術大会
開催日: 2025/03/19 - 2025/03/21
急速な高齢化に伴って認知症発症者の増加も顕著となっている。厚生労働省の資料によると認知症高齢者数の推計は,2012年に462万人,2025年に約700万人となり,65歳以上の高齢者のおよそ5人に1人の割合になるとされる。また,警察庁生活安全局人身安全・少年課によると,認知症に係る行方不明者数は2023年には全国で19,039人(前年比330人増加)人,そのうち死亡者は553人に達しており,今後,認知症を患っても地域で暮らしていける環境の整備が大きな課題となっている。
このような状況に対して,厚生労働省は2012年に「認知症施策推進5か年計画 平成25~29年度(2013~2017)」(オレンジプラン)および2017年に改定された「認知症施策推進総合戦略-認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて-」(新オレンジプラン)を策定した。オレンジプランおよび新オレンジプランでは,いずれも認知症カフェ等の設置・普及が挙げられており,地域の実情に応じて認知症地域支援推進員などが企画するなど,認知症の人が集まる場や認知症カフェなどの認知症の人や家族が集う取り組みを2020(平成32)年度までに全市町村に普及させることとなっている。
認知症カフェ(Alzheimer Café)は,1997年にオランダでオランダアルツハイマー協会(Alzheimer Nederland)と臨床老年心理学者ベレ・ミーセン(Bere Miesen)が協力して始めたものが最初である。その後急速に広まっている。名称は,認知症カフェの他,オレンジカフェともいわれる。(武ほか,2015)。
本研究は、高齢化が進む郊外住宅団地における認知症カフェの取り組みの実態について明らかにすることを目的とし、高齢社会における地域づくりについて検討する。
広島市における認知症カフェは、国の施策開始以降急速に設置数が増えており、近年,郊外地域には介護サービス施設が増加し,また認知症カフェも郊外地域の安佐南区や安佐北区で増加が顕著であった。なかでも1970年代から1980年代にかけて宅地開発が行われた広島市の郊外地域では,子ども世代の独立によって高齢夫婦世帯や高齢単独世帯が増加し,老年人口率が30%を超えた超高齢化社会となっている。郊外住宅地は開発時においては子育て環境の整備に重点があったが,カフェなどの高齢者の居場所が少なく,高齢化社会に対応していない問題があった。