新河岸川流域の河川水質の変化とその要因について(2)Changes in River Water Quality in the Shingashi River Basin and its factors(2)
乙幡正喜(法政大・院)*・小寺浩二(法政大・地理)OPPATA Masaki (Grad. Hosei Univ.), Koji KODERA (Hosei Univ.)
キーワード:水環境・狭山丘陵・新河岸川・生活排水・工場排水Keywords :Water Environment, Sayama Hills, Singashi River, Domestic Wastewater, Factory Drain
Ⅰ はじめに
新河岸川流域は、かつて水質悪化が顕著な地域であったが、近年は流域下水道や親水事業で水質が改善しつつある。しかし、狭山丘陵に位置する支流の上流部においては依然水質が改善していない地域も存在している。汚染源の特定について2020年12月より3年間を調査実施した。調査結果に基づき水質を中心とした水環境の特徴を考察する。
Ⅱ 対象地域
狭山丘陵周辺で水質が悪化している河川を調査対象とした。柳瀬川水系の不老川上流部、六ツ家川上流部、砂川堀流域と目黒川と空堀川中流域の5ヶ所及び、新河岸川本流の調査を実施した。
Ⅲ 研究方法
例月調査として汚染源の特定のため2020年12月より2022年11月まで毎月12地点の調査を実施した。2期調査として2022年12月より2023年11月まで毎月14地点の調査現地では、水温、気温、電気伝導度(EC)、COD、pH及びRpHを計測し採水して研究室にてイオンクロマトグラフを使用し、主要溶存成分の分析を行う。
Ⅳ 結果・考察
EC空間分布(図1)では、六ツ家川上流の北野一般廃棄物最終処分場放流口(1)で、2020年12月のEC値1,732μS/cm、2021年 3月は459μS/cm、2022年3月は527μS/cm中央値、1,144μS/cmとなっている。3月は数値が低くなる傾向がある。雨による影響は少ないと思われる。黒目川の降馬橋 (10)のEC平均値は283μS/cⅿと低い数値である。ここから100m下流の清涼飲料水工場排水放流口(11)のEC平均値は2020年12月にEC値が2,503μS/cmと非常に高い数値を示していた。ECの中央値は2,109μS/cⅿである。下流のよしきり橋(12)のEC平均値381μS/cmと希釈されている。2021年6月の水温は31.0℃であった。これは工場排水が直接黒目川に排出されており非常に高い水温であった。上流の降馬橋の水温は23.0℃である。砂川堀放流口(26)のEC平均値は砂川堀の永久保橋わきの雨水管放流口から薄茶色の水が流れていた。初観測は2021年12月でありEC値は1,450μS/cmであり2023年5月は5,550μS/cmと4倍の高い数値である。中央値は3,956μS/cmであった。砂川堀は都市下水路であり雨水管を通して一般家庭の合併浄化層の排水及び処理を行った工場排水の流入がある。狭山丘陵周辺河川の多くの地点においてCaHCo₃型を示している。地点8、11、26は極端なNaCl型の水質組成となり、生活水や工場排水が多く流れ込むことが示唆される。
新河岸川流域のTOC中央値はほぼ1.2~3.5を示している。例外として砂川堀放流口(8)の変動が激しくTOCは2.3~19.2 ,中央値は8.0と非常に高い数値となっている。
Ⅴ おわりに
砂川堀では放流口(26)からCOD値36.0の非常に高い排水が流入している。六ツ家川上流では一般廃棄物最終処分場の浸出水がECに影響し、空堀川では中流域でEC,pHが乳製品工場排水の影響で負荷が高まっている。黒目川の中流域でも清涼飲料工場の排水の影響でEC,CODが高い数値を示している。主要溶存成分の分析結果を研究に反映させたい。
参 考 文 献
乙幡正喜・小寺浩二(2024):新河岸川上流域の河川水質の変化とその要因について,日本地理学会春季学術大会発表要旨集.