日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: S505
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小学校における世界の学習状況
*中谷 佳子
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抄録

1. 問題の所在

 2017に告示された小学校学習指導要領では,進展するグローバル化への対応を色濃く反映した内容となった。地図帳の配布が1年前倒しになり,第3学年から使用されることもその一例であろう。また,第3学年「販売のしごと」では,「他地域や外国との関わり」が,第4学年「特色のある地域」では,「国際交流に取り組んでいる地域」が,第5学年「我が国の工業生産」では,「交通網の広がり,外国との関わり」が取り上げられている。

 しかし,実際の授業はどうだろうか。「外国との関わり」が示された第3学年「販売のしごと」についても,内容の取扱いには,「外国との関わりに着目するとは,外国を含めた商品の産地や仕入れ先の名称と位置,買い物に来る客の居住地の範囲などについて調べることである」とある。子どもたちは,店(スーパーマーケット)で販売されている商品の産地の国名や位置,また国旗については理解したとしも,その国のようすや文化,その土地に住む「人の営み」について学ぶ機会は第6学年「世界の中の日本」の単元までない。このことは,第4学年,第5学年の学習内容でも同様である。

 しかし,それでは,社会科学習が,寺本(2003)のいう「精神の鎖国」という状況に陥ってしまう。そこで筆者は,学習指導要領の示す空間スケール(第3学年:市町村,第4学年:都道府県,第5学年:日本)のもとで,そのスケールの中にある外国や外国の人々の営みを積極的に教材化し,外国とつながる社会科授業を開発してきた。

2. 単元構想と授業の実際

 本実践は,第4学年「国際交流がさかんなまちづくり」で,全国の約2割に相当する約900人のアフガニスタン人が生活する千葉県Y市を教材として取組んだ単元である。

 アフガニスタン人との交流やアフガニスタン人を支えるボランティア活動をするKさんを学ぶことを通して,子どもたちは自然とアフガニスタンという国やイスラム教の文化について調べ,学びを深めていった。

 本発表では,現行の指導要領のもとで行われている小学校社会科「外国」に関わる授業の課題や,本単元において,アフガニスタンの文化やイスラム教を学び,「外国人と共生すること」について話し合う子どものようすから,小学校社会科,特に中学年の子どもたちが外国を学ぶ必要性を考えていきたい。

文献

寺本潔2003.学習指導要領における地理教育の内容.村山祐司編『21世紀の地理 新しい地理教育』朝倉書店,79-89

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