日本地理学会発表要旨集
2025年日本地理学会春季学術大会
セッションID: 948
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D-InSARを用いた南アルプスにおける活動性地すべりの時系列解析-諸子沢地すべりを事例にー
*當麻 央介齋藤 仁
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抄録

日本国内には,数多くの地すべりが存在しているため,地すべりの変動モニタリングは重要である.近年,干渉SARを用いることで,現地調査が困難な場所や広範囲に分布する地すべりの活動性の把握が可能となってきた.現在,ALOS-2の打ち上げから約10年が経過し,同一の斜面を経年的に高い精度で観測できるようになりつつあり,ALOS-4の利用も期待されている.しかし,広域を対象とした地すべりの変動検出の研究は多くなく,さらなる事例の蓄積が必要である.そこで,本研究では関連する研究の少ない南アルプスを対象に,干渉SARを用いて地すべりの空間分布と活動性を時系列で解明することを目的とする.本発表では,その中の一事例として静岡市の諸子沢地すべりを対象とし,大規模な地すべり発生前の斜面の変動を時系列で明らかにする.本研究の対象地域は地すべりが頻発する地域であり,地すべり事例を詳細に検討することは,今後の地すべり予測のために有意義であるといえる.

解析の結果,地すべり範囲やその周辺の斜面において,大規模な地すべりが発生する以前から継続的な変位が発生していた.地すべりの斜面は,斜面の上部の平均変位速度が5cm/yr以下である一方で,斜面の下部は5~10cm/yr程度の平均変位速度を記録しており,斜面上部と比較して,斜面の下部が活動的であったことが明らかとなった.また,斜面は2014年から2018年までは衛星から遠ざかる変位が卓越するが,2018年から2019年の期間は衛星に近づく変位に変わり,2019年以降は再び衛星から遠ざかる変位が卓越することが分かった.特に,2018年6月5日と2018年8月14日のペアによるD-InSAR解析結果より,崩壊範囲と整合する範囲において衛星に近づく変位が顕著に見られた.このことは,諸子沢地すべりの変動は一定ではなく,複雑に変動したことを示唆している.今後は,得られた変動結果を詳細に検証するとともに,解析範囲を広げて活動性地すべりの分布の解明が課題である.

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