1991 年 32 巻 2 号 p. 9-18
ドイツ自然科学者医者協会は、1905年にオーストリアのメランにおける第77回大会において、アビトゥアの受験をめざす生徒(9年制のギムナジウム、実科ギムナジウム、高等実科学校の生徒)のための一般教育としての自然科学教育に関する提案を行った。本提案は、下記のような主張に基づいて構成されていることから、ドイツにおける現代中等理科教育成立過程の上で極めて重要な役割を果たしたものと判断される。1. 大学進学をめざす生徒にとって、自然科学は古典や歴史と同様、一般教育的陶冶財として不可欠である。2. 中等学校における自然科学が古典や歴史と同等の一般教育的陶冶価値を発揮するためには、それにふさわしい固有の展開と発展を遂げなければならない。3. 自然科学において生徒を科学的に陶冶するためには、生徒自身による観察や実験が必要である。4. 物理は、これまでのように数字の教師によってではなく、実験のできる物理の教師によって教えられるべきである。こうした主張は、ヘフラー(Höfler, A.)のような先覚者達が展開した「自然科学の一般教育的陶冶価値」に関する理論と深く係っていることがわかる。なお、この運動は、その後上記以外の中等学校、及び中等学校の教員養成における自然科学教育改革運動にまで発展した。