2018 年 59 巻 4 号 p. 2-33
本稿では,台湾の半導体設計企業による液晶デジタルテレビ用SoC事業の分析を通じて,後発工業国の企業が,製品の中核機能が高度に集約された「問題解決型コア部品」の供給者として高い市場シェアを確立するにいたった過程を明らかにする。分析にあたっては,台湾のSoCベンダーが,コンポーネント知識のみならず製品レベルの知識までを獲得するにいたった過程に光をあてる。まず,台湾企業が先発SoCベンダーへのキャッチアップを遂げた局面を分析し,コンポーネント知識の5つの獲得経路を示す。また,これらの企業が,顧客が直面する問題の解決と顧客のもつ製品知識の吸収を並行して行うなかから,製品レベルの知識を獲得した経緯を明らかにする。次いで台湾のSoCベンダーが高い市場シェアを確立した局面を分析し,これらの企業への製品知識の持続的流入のメカニズムを示す。最後に議論のまとめを行う。