2022 年 63 巻 1 号 p. 45-71
本稿の目的は先行研究レビューを通して高齢者福祉政策を取り巻く制度的背景と研究状況を把握し,今後研究を更に進めるべき課題を明らかにすることである。具体的には,先行研究を制度的背景としての社会保障制度,福祉レジーム論と中国の位置づけ,中国の高齢者福祉政策という3つの研究群に分けて論じる。まず,先行研究レビューを通して現代中国の社会保障制度の変遷,内容,特徴などを明らかにする。次に,こうした社会保障制度は,エスピン-アンデルセン[Esping-Andersen 1990]の福祉レジーム論においてどのような位置づけにあるのかについて先行文献を活用しながら検討する。さらに,中国政府は高齢者介護問題に対してどのような政策で対応しているのかについて先行研究を整理し高齢者福祉政策の現状と課題などを明らかにする。最後に,こうした先行研究レビューと,先行研究に対する評価をふまえた今後の研究課題を提示する。