日本補綴歯科学会誌
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専門医症例報告
咬合不全による口腔症状への補綴学的対応の1症例
星 憲幸
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2009 年 1 巻 3 号 p. 323-326

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抄録
症例の概要:口腔内の不快症状を主訴に来院した68歳の女性.保存科による治療が先行しており補綴科初診時の診査では下顎運動に制限などの障害は無かったが咬合不調和があり,これによる唾液流出量の減少が主たる原因と考えられた.そこで唾液流出量も参考に咬合高径,咬合平面,咬頭傾斜角及び下顎位を決定し最終補綴を行なった.最終補綴終了後は2~6ヶ月程の間隔でメインテナンスを行ない現在4年を過ぎているが,咀嚼など機能面は良好で,唾液流出量も正常値であり不定愁訴を訴えない状態が続いている.
考察:咬合を適切に回復することで安心して下顎運動を行なうことが可能となり,それにより唾液腺に対しても圧刺激が加わり口腔内の不快症状が改善したものと考えられた.
結論:患者が安心して力をいれ咬合・咀嚼が出来る補綴装置を装着することは咀嚼や発音などの機能だけではなく口腔内の不快症状への改善を期待でき,患者のQOL向上への寄与が可能である.また,唾液流出量を補綴処置時の1つの検査項目として利用することで治療の一助になることが示唆されたと思われる.
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© 2009 社団法人日本補綴歯科学会
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