2019 年 11 巻 2 号 p. 87-92
近代歯科医療に大きな変革をもたらしたもののひとつとして,オッセオインテグレーションを礎とするインプラント療法を挙げる人が多い.しかしながら,安易な姿勢で臨むならば術前よりも悪い結果を患者に与え,好ましくない修復法との烙印を押されかねない.それは,臨床応用開始からたかだか半世紀しか経ていないものの,適切に応用されるならば長期間にわたる優れた予知性を示すことが知られてきた.このように長期間を見据えた場合には,診断,治療計画の立案に際して,発現する力を補綴の知識に基づいて考察することが求められる.本稿では,インプラント療法を通して歯科医療従事者としての喜びと怖さとを体験してきた臨床家としての考えを述べたい.