日本補綴歯科学会誌
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専門医症例報告
交叉咬合排列により義歯機能時の安定を図ることで咀嚼機能を回復した全部床義歯症例
岡田 信輔
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2022 年 14 巻 4 号 p. 383-386

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抄録

症例の概要:患者は80歳男性,咀嚼時の上顎義歯の易脱離,下顎義歯床下粘膜の疼痛を主訴として来院した.不適切な人工歯排列位置による咀嚼障害の診断の下,義歯の力学的安定を高めるため,臼歯部に交叉咬合排列を付与した義歯を新製した.

考察:本症例では簡易咬合採得を行うことにより臼歯部の顎間関係が交叉咬合排列の適応であり,旧義歯の人工歯排列では対応できないことを診断できた.また,患者の水平的顎位をゴシックアーチ描記法を用いて決定したこと,閉口機能印象により十分な辺縁封鎖が得られたことが本症例の高い患者満足度につながったと考えられる.

結論:機能時に易脱離する上顎義歯に対して交叉咬合排列の付与は有用である可能性が示唆された.

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