2025 年 17 巻 1 号 p. 5-11
全部床義歯(以下,CD)による機能回復を図るうえで,咬合調整が重要であることに疑いの余地がない.2007年に公益財団法人日本補綴歯科学会から発行された『有床義歯補綴診療のガイドライン』によると,臼歯部人工歯排列の要件および咬合調整時の確認事項について記されているが,咬合調整の具体的な手技について解説されていない.昨今,日本は超高齢社会を迎え,CD患者の病態,治療要件も変化していると推察する.そこで本稿では,1)人工歯排列位置,2)付与すべき咬合様式,3)平衡咬合と咬合平衡の概念,から考えたCDの咬合調整について実際の症例を交えて私見を述べたい.