2025 年 17 巻 2 号 p. 114-117
症例の概要:患者は61歳女性.臼歯部咀嚼困難と前歯部審美不良を主訴に来院した.重度咬耗による下顎前歯の歯冠長の不足と上顎右側臼歯挺出による補綴空隙の減少を認めたが,咬合高径の低下は認めなかった.外科的補綴前処置の応用と,咬合挙上を行わない補綴治療により,機能および審美回復を行った.
考察:下顎前歯に対し外科的歯冠長延長術を行い,審美性および部分床義歯の鉤歯として歯冠長が確保された.上顎歯列を無歯顎としたことで補綴設計が単純化され,管理も容易となった.
結論:重度咬耗と臼歯部すれ違い咬合に対し,適切な補綴前処置後の歯冠および欠損補綴治療により,咬合平面の是正と補綴装置の維持力向上につながった.