抄録
インプラント修復において審美性を考慮する場合,歯冠修復と同様に辺縁歯肉と歯冠乳頭の位置,およびその長期的安定が問題となる.このことに関するリサーチは1990年代から2000年代に数多く見られるが,これらの研究は1980年代から広く知られるインプラント埋入後に起こる周囲硬組織の変化に起因する見かけの変化をリサーチしたに過ぎないように思える.つまり,インプラント修復において審美性を確立するためには,従来からいわれているインプラント埋入部位に必要な硬組織を確保,または造成することである.生体には固有差があるが,一般的にはインプラントの頬(唇)側および舌(口蓋)側に2 mm以上,インプラントと天然歯間に1.5 mm以上,インプラントとインプラント間に3 mm以上の硬組織を確保し,辺縁歯肉より3 mm根尖側方向にインプラントが位置するよう埋入することが,インプラント修復を審美的に完結できるのではないかと多くの文献から示唆される.