抄録
目的:歯科治療時に患者がとる頭位が,顆頭位に及ぼす影響についてはいまだ不明な点が多い.そこで本研究では,坐位での頭位の前後的変化が顆頭点の偏位に及ぼす影響を明らかにする目的で,タッピング運動時の顆頭点の前後的ならびに上下的偏位を測定した.
方法:被験者は,顎口腔系に異常を認めない健常者8名とした.被験者にはアンテリアジグを装着し,坐位での自然頭位を基準位とし,頭位を前後的(基準位から10度後屈,10度前屈,20度前屈)に変化させてタッピング運動を行ったときの,左側顆頭点の前後的ならびに上下的偏位量を測定した.測定基準面はフランクフルト平面,顆頭位測定点はBeyron's pointとし,測定には改良を加えた三次元6自由度顎運動測定装置ナソヘキサグラフ®を用いた.
結果:顆頭位測定点の前後方向の偏位については,頭位10度後屈と頭位20度前屈間で有意差が認められた.また顆頭位測定点の上下方向の偏位については,基準位である自然頭位と頭位10度後屈間,頭位10度後屈と頭位10度前屈間,頭位10度後屈と頭位20度前屈間で有意差が認められた.
結論:坐位における頭位の変化が,顆頭の前後的ならびに上下的偏位に影響を及ぼすことが明らかとなり,咬合に関与する歯科治療時には,患者の頭位に十分配慮する必要があることが示唆された.