抄録
症例の概要:56歳女性.全顎にわたる補綴装置の歯冠長の不足と,咬筋や側頭筋の圧痛を認めたため,治療用義歯およびコンビネーションスプリントを用いて垂直的・水平的顎位の是正を行った.下顎位が安定し顎関節症症状が消失した後,約4ヶ月経過観察を行い変化がないことを確認し,最終補綴を行った.
考察:補綴処置終了から約4年が経過後,上顎義歯の咬合面レストと下顎前装冠の一部に破損が認められたが,顎関節症症状の再発は無く,患者の満足度は高く保たれている.
結論:顎関節症症状を伴う低位咬合症例に対し,治療用義歯,スプリント等の装着を含めた一連の補綴処置により咬合位および咬合接触を回復することは有効な手段である.