日本補綴歯科学会誌
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◆企画論文:認知症高齢者に対する補綴歯科治療の考え方
認知症を理解する
柴田 展人新井 平伊
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2014 年 6 巻 3 号 p. 243-248

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抄録
 認知症の症状は,もの忘れなどの中核症状と抑うつ,興奮,不安,徘徊などの周辺症状に大別される.認知症の原因は多岐にわたるが,最も多い原因はAlzheimer病であり,現在日本では中核症状に対して4剤の薬剤の保険適応が認められており,それぞれの症例に合せて薬剤選択がされている.周辺症状に対しては,さまざまな対症的な薬物治療があるが,病期が進行してくると介護上対応が困難な場合が多い.認知症では,認知機能が低下するほど死亡率が高まるが,主な死亡原因は嚥下性肺炎である.嚥下性肺炎の予防には口腔ケア,補綴治療が必須である.嚥下機能を保つことは,患者のコミュニケーションも改善し,認知機能維持にも重要である.補綴治療を適切に行い残存歯数を維持することは,栄養状態の改善にもつながり,高齢認知症患者においてはその意義も大きい.補綴治療は患者の認知機能を評価しながら,治療への理解・協力を求めていくこととなる.必要に応じて家族・介護者のサポートを得ながら,誤飲などの事故防止に努めていくことが大切である.口腔内セネストパチーは高齢者うつ病に伴いやすい症状の一つであり,認知機能障害との関係も深い.認知症専門医,歯科医師が連携しながら対応していくことが期待される.
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© 2014 社団法人日本補綴歯科学会
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