目的:健常成人を対象に,スプリント装着により臼歯部咬合支持域を仮想喪失させた場合の姿勢外乱からの立ち直り動作反応を検索し,臼歯部咬合支持域と姿勢調節機能の関連性を検証した.
方法:被験者は顎口腔系に異常を認めない健常成人15名(26.3±3.1歳)である.フォースプレート上に開眼,閉足状態で直立させ,右側下肢の総腓骨神経に1msecの最大上経皮電気刺激を8–10秒間隔でランダムに与えて,長腓骨筋および前脛骨筋を不随意収縮させた.咬合条件は①下顎安静状態(Control),②前歯接触型スプリント装着時の随意性最大噛みしめ(AntSP-CL),③随意性最大噛みしめ(CL)とし,外乱後1秒間の重心動揺総軌跡長,前後および左右方向の床反力最大振幅値について比較分析を行った.
結果:Control時に比べ,AntSP-CL時の重心動揺総軌跡長,前後および左右方向の床反力最大振幅値に,いずれも有意差は認められなかった.CL時の重心動揺総軌跡長(
p<0.01)および前後方向の床反力最大振幅値(
p<0.05)はControl時と比べて有意に減少した(one-way ANOVA, Bonferroni correction method).
結論:臼歯部咬合支持域はCLによる姿勢立ち直り調節機能を亢進させる可能性が示唆されたことから,咬合の適正保持は咀嚼機能のみならず運動機能にとっても重要と思われる.
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