日本補綴歯科学会誌
Online ISSN : 1883-6860
Print ISSN : 1883-4426
ISSN-L : 1883-4426
依頼論文
社会医療診療行為別調査からみた過去18年間の義歯治療の変化
佐藤 裕二北川 昇一色 ゆかり
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 8 巻 2 号 p. 185-191

詳細
抄録

目的:残存歯の増加により義歯の患者数は微減したが,部分床義歯患者数は変化せず,高齢者に対する適切な義歯治療の必要性が求められている.本研究の目的は,厚生労働省の社会医療診療行為別調査をもとに,平成8年~25年にかけての義歯診療の量的・質的な変化を明らかにすることである.
方法:社会医療診療行為別調査(厚生労働省)の結果から,歯科診療の大分類ごとの点数,義歯関連診療細分類ごとの件数,を抽出した.さらにこの18年を6年ずつの3区分に分けて,1)義歯件数,2)クラスプ,3)バーと補強線,4)修理,5)裏装の5項目について検討した.
結果:義歯の総数は2007年から減少していた.多数歯欠損および総義歯は減少したが,少数歯欠損(1~8歯)はあまり減少しなかった.クラスプの総数は,義歯数の減少に対応していた.1床当たりのクラスプの数は,3カ所弱であった.貴金属(金銀パラジウム合金)が減り,卑金属(Co-Cr)がやや増加した.2002年に一時的にバーが増加した.修理は2003年がピークであった.床裏装は新製義歯の総数の2割程度だった.
結論:義歯新製は減少傾向にあるが,修理や床裏装はそれほど減少していなかった.補強線の廃止は,修理の一時的な増加との関係が示唆された.クラスプやバーの材質は価格の不安定な金銀パラジウム合金から卑金属への移行が認められた.これらの変化には,社会,技術,制度の変化との関係が疑われた.

著者関連情報
© 2016 公益社団法人日本補綴歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top