2017 年 9 巻 1 号 p. 38-45
近年の歯科医療の進歩において,デジタル技術は中核的な役割を担ってきた.デジタル技術を基盤とした歯科医療,いわゆるデジタルデンティストリーは,歯科医療技術の向上だけでなく歯科医療の枠組み,ワークフローを根本的に変革してきた.CAD/CAM修復や光学印象の普及により,補綴歯科治療の全過程がデジタル化されつつあり,補綴装置の精度・再現性の向上,質の均一化,医療廃棄物の削減,技工及び臨床ステップの簡便化・可視化,データの共有・統合などがもたらされた.
現状では,支台歯形成や多数歯欠損症例における欠損部顎堤の印象や咬合採得,人工歯排列位置の決定などについては,デジタル技術の活用が立ち後れている領域もあるが,これらについてもさまざまな取り組みが行われており,将来的にはデジタル技術を基盤としたワークフローが創出されるであろう.
本稿では,補綴歯科治療におけるデジタル化の現状と,今後の展開について,特にデジタル化が現在直面している技術的限界に焦点を当てながら考察する.