日本調理科学会大会研究発表要旨集
創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
セッションID: 1D-a1
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口頭発表
温塩水解凍により解凍したマグロ肉の品質
*米田 千恵粟津原 元子畑江 敬子
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キーワード: マグロ, 解凍法, 温塩水
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抄録


【目的】
 温塩水解凍は、生食用魚肉の解凍法の1つであり、冷凍魚の塊肉またはサクを約30℃の食塩水に短時間浸漬後、冷蔵庫内で解凍する。本法でマグロ肉を解凍すると、光沢や赤色の発色が増すというが、科学的に検証されていないため、その品質を詳細に調べた。
【方法】
 冷凍メバチ赤身肉の塊(約200~550g)を2または3分割後、約100~150gに成形し、以下に述べる解凍法に供試した。(1)温塩水解凍:マグロ肉を30℃の3%食塩水に40~60秒間浸漬後、4℃(恒温器)に1.5時間放置。(2)温水解凍:温塩水の代わりに30℃の水を使用。(3)冷蔵緩慢解凍: 4℃に24時間放置。3種の解凍法とも上記の解凍操作後、刺身に切り、4℃に2時間放置した。解凍の各過程において、温度、重量変化、色(L*値、a*値、b*値:分光色差計)を測定し、解凍後の試料につき、ATP関連化合物量(HPLC)、遊離アミノ酸量(アミノ酸分析計)、食塩量(原子吸光法)を常法により測定し、あわせて官能評価(2点識別試験法)を行った。
【結果】
 温塩水および温水解凍について、解凍過程における温度、重量変化、色を測定したところ、両方法ともマグロの赤色が保たれ、両者の間で差異は認められなかった。官能評価では、温塩水解凍は、水っぽさが少なく、ねっとり感、うま味が強いと評価され、好まれた。次に、3方法で解凍した試料につき、ATP関連化合物量、遊離アミノ酸量を測定したが、解凍法による差異はほとんどなく、一方で、刺身の外側の食塩量が温塩水解凍では有意に高かった。従って、食塩の存在により味が強調され、温塩水処理により肉表面のタンパク質が溶解して、粘性が増し、水っぽさが軽減されるものと考えられた。

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© 2007日本調理科学会
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