日本調理科学会大会研究発表要旨集
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口頭発表
  • −調味料・香辛料によるタイプ分類−
    福留 奈美, 小磯 華織
    セッションID: 1A-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】現在、日本で食べられている麻婆豆腐には甘口から極辛口まで様々なタイプがある。本研究の目的は、中国から麻婆豆腐がいつごろ日本に入ってきてどのように日本の食卓に浸透したのかを明らかにし、調味料・香辛料の使い方から麻婆豆腐のタイプ分けを行い、料理の伝来と受容のプロセスを追うことにある。

    【方法】まず、料理書・家庭科教科書・調理実習書などから麻婆豆腐や四川料理に関する情報と麻婆豆腐レシピを収集した。次に、麻婆豆腐レシピ125品の調味料・香辛料に着目して、出現頻度が5以下のものを含むレシピを除き、101品について階層型クラスター分析(ウォード法)を行い、得られたレシピ群に対し調味料・香辛料の組み合わせから特徴づけを行った。また、2020年6月現在、市場に出回るレトルト製品「麻婆豆腐の素」25品を集め、原材料名に記載された調味料・香辛料の種類からクラスター分析による分類を行った。

    【結果】1)文献調査から、日本語の麻婆豆腐レシピの初出は『中国料理』(王馬熙純著、1958年6月)で、麻婆豆腐を日本に紹介したとされる料理人陳建民による四川飯店開業(1958年11月)と同年であった。その後、各種料理書での紹介と並行してNHK「きょうの料理」(王馬熙純1959、陳建民1966)の放送や「麻婆豆腐の素」の発売(丸美屋 1971)が麻婆豆腐の一般家庭への浸透に寄与したと考えられた。2)クラスター分析により、101品の麻婆豆腐レシピは調味料・香辛料等の組合せで特徴づけられる和風(13品)、中華風(43品)、和中折衷型(45品)の3タイプに分けられた。3)「麻婆豆腐の素」25品に使用された調味料・香辛料は、和風・中華風に2分類された。

  • −江戸時代の料理集「鯛百珍料理秘密箱」にみる先人の知恵−
    福田 翼, 小林 聡子, 辰野 竜平, 古下 学
    セッションID: 1A-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】さつま砂糖漬けは,鯛百珍料理秘密箱(1785年)に記載され,味噌漬け工程と砂糖漬け工程により製造されるタイの保存食である。従来研究成果より,味噌漬け工程は細菌増殖抑制および香りを改善した。一般に,味噌製造に利用される酵母Zygosaccharomyces 属は,発酵により細菌増殖抑制や香りを改善する。同書には「風が入らなければ長期保存可能」という主旨の記述があり,発酵の関与を示唆している。そこで,真菌叢に着目し,さつま砂糖漬け製造メカニズムを検討した。

    【方法】さつま砂糖漬け製造は,まず,マダイを塩干し,滅菌ガーゼに包み,味噌に漬け込んだ。酵母利用の場合,味噌漬け工程後の魚肉と同等の水分および塩分に調整し接種した。魚肉を滅菌容器に入れ,砂糖を添加した。20℃で保存し,適宜,サンプリングを行った。

    【結果・考察】味噌より単離された酵母は,Zygosaccharomyces 属の近縁種であった。この味噌を用いてさつま砂糖漬け製造を行った結果,保存期間中の真菌叢はZygosaccharomyces 属が優占となった。一方,味噌漬けを行わなかった場合,他属が優占となった。味噌漬けを行った場合,保存期間中の細菌数は,味噌漬けを行わなかった場合よりも低かった。さらに,においは,味噌漬けを行わなかった場合よりも強かった。そこで,味噌の代替として,味噌およびさつま砂糖漬けより単離されたZygosaccharomyces 属を利用し,さつま砂糖漬け製造を試みた。いずれの酵母においても,保存期間中の細菌数は,未接種よりも低かった。さらに,においは,未接種よりも強かった。したがって,さつま砂糖漬け製造メカニズムは,味噌に含まれる酵母を利用し,保存性や香りを向上させる方法であると考えられた。

  • 清水 達也, 田中 柚菜, 林田 日菜子, 吉江 明広, 松下 実代, 竹中 徹男, 小西 雄大, 伏木 亨, 山崎 英恵
    セッションID: 1A-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    目的和食は健康的な食事として国内外から注目されている。しかし和食がどのように健康に寄与するのか具体的に示した例は多くない。例えば和食に使用される食品の個々の成分が身体に与える影響を検討した報告は数多いが、1回分の食事全体を対象に検討した例は少ない。本研究ではフードモデルを用い、食事を全体で捉え、和食のもつ栄養学的な特性について検討することとした。

    方法19〜66歳の健康な男女167名を被験者とし、フードモデルシステム(株式会社いわさき)を用いて、夕食時に近い時間帯(16:00〜18:30)に実験を実施した。フードモデルは和食文化国民会議(農林水産省)が示す定義を用い、和食、和食以外の2群に分けた。食事の量や品数は制限せず、その時の空腹度に合わせ、「食べて満足できる」と思う食事を、和食と和食以外からそれぞれ1回ずつビュッフェ形式で自由に選択してもらった。和食を選ぶ際には、主食に必ずご飯を含めることとした。食育SATシステムにより総エネルギー量、各種栄養素量を測定した。

    結果・考察総エネルギー量、総脂質、飽和脂肪酸は和食が和食以外と比較して有意に低い値を示した(p<0.01)。n-3系多価不飽和脂肪酸は和食が和食以外と比較して有意に高い値を示した(p<0.01)。これは、和食に魚介類を用いた料理が多いことが影響していると推察された。塩分量は2群間に有意な差は認められなかった。

    結論食事内容や量の制限がない状態で食事を選択した場合でも、総エネルギー量、総脂質が低く抑えられるという和食の特性を示すことができた。

  • 早川 文代, 風見 由香利, 中野 優子, 井奥 加奈
    セッションID: 1A-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】「かたさ」は、多くの食品・調理においてテクスチャー評価の観点となるが、多義的、複合的で、曖昧さを含むこともあり、多くの類義語があることも示唆されている。本研究では、高精度の食品評価に資する参照資料を得るため、「かたさ」に関連する用語を体系化し、「かたさ」の要素を整理することを試みた。

    【方法】日本語テクスチャー用語445語を一対で比較し、食品のテクスチャー研究者12名(のべ96名)が用語間の意味の類似性を4段階で評価したデータ(文献1)を用いた。ここから、「かたい」あるいは「やわらかい」との意味の類似性の評価で2人以上の反応が得られた用語を「かたさ関連用語」として抽出した。得られた用語のデータに多次元尺度法(MDS)を適用し、用語の空間座標を求めた。さらに、空間座標にクラスター分析を適用して用語を分類した。

    【結果】「かたさ関連用語」として184語を選定した。MDSの空間座標の計算には、モデルの適合度と解釈しやすさから5次元解を採用することとした。第1次元は「かたい」vs「やわらかい」、第2次元は「破砕」vs「流動」等、各次元の解釈ができた。クラスター分析の結果、184語は3分類され、①主に「かたさ」に関連する語、②「かたさ」にも「やわらかさ」にも関連する語、③主に「やわらかさ」に関連する語と解釈できた。各群はさらに階層的に分類され、小分類として計22クラスターが得られた。22クラスターは、「表面のかたさ」「弾力のあるかたさ」「空気を含む感じのやわらかさ」等と解釈できた。以上より、「かたさ」に関する用語体系が得られ、日本語の「かたさ」に関連する多要素を整理することができた。

    1) Hayakawa et al., J. Texture Studies, 44, 140-159 (2013)

  • 山口 浩輝, 村居 景太, 古内 覚, 髙橋 一敏, 笠松 千夏, 巽 萌美, 水越 利巳, 宮野 博, 岡内 俊太郎, 杉木 正之
    セッションID: 1A-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】グルタミン酸は、うま味物質として様々な食品中に含まれている。一般的に、グルタミン酸は液体クロマトグラフィーを用いて分析される。この方法は試料中の濃度を他のアミノ酸と共に高い精度と正確性で測定できる一方で、大型かつ高額な分析装置、複雑な前処理と分析に携わる高い専門性が必要なため、調理現場や授業の中での測定は困難であった。調理科学実験の更なる発展のために、我々は簡便かつ迅速に試料中の対象化合物を測定できる酵素法に着目し、グルタミン酸測定デバイスの開発と調理科学実験での実用性検討を目的とした。

    【方法】1.水質検査キットとして広く使用されている持ち運び可能な小型デバイスである「パックテスト®」および専用の小型吸光度計である「デジタルパックテスト®」にグルタミン酸分析用酵素を適用し、その性能を評価した。2.本デバイスを用いて複数の食品中のグルタミン酸を測定し、調理科学実験への応用可能性を調査した。

    【結果】1.試作したグルタミン酸測定用のパックテストは、食品中の遊離グルタミン酸を食品溶液の希釈のみで測定可能であり、測定時間は10分以内であった。簡便な操作によりグルタミン酸が測定できることから調理現場でも使用可能である。2.加熱時間の異なる牛肉スープと抽出方法の異なる昆布だしを調製し測定に供したところ、調理条件に応じたグルタミン酸濃度をその場で分析することができた。本測定デバイスを官能評価と併用することで、うま味の客観的な指標を提供でき、調理で得られる味風味の更なる理解促進が可能であることが示唆された。今後、他の調理現場や調理科学実験を対象とした更なる応用可能性を確認する予定である。

  • 謝 裕基
    セッションID: 1A-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】食品への調味成分の浸透は製品の品質を左右する大きな要素であるが,容器詰レトルト食品については密封後に改めて外部から食材や調味成分を追加することはできないため,容器内部における調味成分の物質移動に関する知見の収集は容器詰レトルト食品の製造方法の設計に有用である.この観点から,コンニャクおよびサバを固形物とし,調味成分として塩化ナトリウム(NaCl)に着目した容器詰レトルト食品を製造し,固形物へのNaClの浸透量の測定を行った.

    【方法】前処理したコンニャクおよびサバを注液とともにレトルトパウチに充填した.注液には3種類の濃度のNaCl水溶液,または醤油を基に作製したモデル液を使用した.密封したレトルトパウチを120°Cで35分間殺菌し,25°Cにおいて一定期間保存した後に固形物(コンニャク,サバ)のNaCl含量(q[mg/g])および外液のNaCl濃度(C[mg/mL])を測定した.

    【結果】コンニャクおよびサバに対するNaClの浸透量(q)を,外液のNaCl濃度(C)で除することによって分配係数(KD=q/C[mL/g])を算出した.注液としてNaCl水溶液を用いた時のKDはコンニャクおよびサバのそれぞれに関して約0.76および0.40mL/gだった一方で,モデル液を用いた時のKDは約0.74および0.48mL/gと,類似した値を示した.この結果から,パウチ詰レトルト食品の製造においては,単一成分系の溶液を注液として使用した実験から,複数成分系の注液を用いた時の食材への調味成分の浸透量を推測できる可能性が示唆された.

  • 山口 智, 西田 毅, 松枝 博明, 吉元 寧, 前津 晋也, 嘉見 大助, 吉田 みどり, 杉山 慶太, 島本 国一
    セッションID: 1B-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】セイヨウカボチャは日本で品種改良が進み、戦後の消費者嗜好の変化によりニホンカボチャにかわり市場の9割以上を占めている。北海道で約5割生産され、端境期には、日本品種がニュージーランドやメキシコより輸入される。近年では、Hokkaidoの名称で日本から持ち込まれたカボチャを基にした品種がEU諸国で栽培されている。蔓が伸びると収穫の負担が大きいため、一定の範囲に果実がつく短節間品種や消費者嗜好に合わせた新品種が農研機構や種苗会社で育成されている。本研究では、これらを含む入手可能なカボチャ品種の理化学的な特徴とサラダ適性を評価した。

    【方法】試験には農研機構で栽培試験されたもの、並びに農協から直接入手した品種、収穫日が明らかなカボチャを用いた。理化学的特徴として、糖、固形分、精製したカボチャでん粉のRVA粘度を、サラダ適性として蒸カボチャとマヨネーズタイプのカボチャサラダを作製して官能評価を行った。

    【結果・考察】カボチャの糖組成は、スクロースが75%以上占めるような品種と50%前後の品種があり、年度によっても同じ傾向が認められた。カボチャのでん粉含量は貯蔵中に大きく減少するが、でん粉粘度は収穫後1か月以降ほとんど変わらないことから、直接は食感に関係しないと思われた。固形分が減少すると食味評価が下がる傾向にあるため、でん粉含量が食味に大きく関与していると思われる。サラダの嗜好適性は、固形感がありかつ甘味が強いものが好まれる傾向にあった一方で、甘味が強くても、固形感がないと評価が低い傾向にあった。さらに、「しっとりとして甘い」「ウリ臭が気になる」などの意見もあり、物性特性に加え香りも影響していると考えられた。

  • 宮内 詩織, 石田 一晃, 篠崎 純子
    セッションID: 1B-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】野菜はその色彩などを好まれて惣菜や料理のトッピングなどに使用されている。しかしながら野菜の色味、特に緑色は、陳列中又は家庭での保存中に変化する場合がある。また光照射下での店頭陳列は野菜の表面が乾燥しやすいこともあり、野菜の外観が変化しやすい。そこで本検討ではオクラを対象とし、コーティング処理を用いて光照射下での緑色の変化を抑制し、オクラを使用した惣菜の品質向上を目的とした。

    【方法】冷凍オクラ(中国産)を沸騰水で2分間茹で後、真空冷却機(MIURA)で10℃まで冷却した。冷却したオクラを浸漬液(水、1 %および2.5 %L-アスコルビン酸Na水溶液)に25 ℃で30分浸漬し、容器に入れ1000 lxの蛍光灯下で24時間、48時間、72時間、96時間静置した。その後、IRIS(アルファ・モス・ジャパン)にて写真を撮影後、緑色の変化率を解析した。また、0.1 %塩化Ca水溶液を沸騰させ冷凍オクラを加熱後、1 %LMペクチンを加えた処理液でも同様の試験を行った。

    【結果】緑色の変化率は、2.5 %L-アスコルビン酸Na水溶液に浸漬した方が、未処理よりも小さかった。また、塩化CaとLMペクチンを含む水溶液で処理したサンプルでも同様の傾向が確認された。これらの結果を今後の惣菜類の作製に応用していく。

  • 粟津 虹, 高畷 晶子, 森 太郎, 久保 加織
    セッションID: 1B-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】日本各地で栽培され、様々な料理に利用されているナスは、加熱調理して食することがほとんどであり、調理後の評価が必要であると考えられる。本研究では、ナスの調理特性を明らかにすることを目的として、F1品種および滋賀県在来ナスの加熱調理後の嗜好性と抗酸化性の変化について評価した。

    【方法】滋賀大学教育学部の農場で栽培し、2019年7月中旬から10月上旬にかけて収穫した千両二号および滋賀県在来ナスの杉谷なすび、高月丸なす、下田なすの計4品種を実験に供試した。煮調理ではかつお出汁で煮た後に醤油で味付けし、焼き調理では果実をオーブンで加熱した後に果皮を取り除いた。抗酸化性はDPPHラジカル消去活性とAAPHラジカル消去活性で評価し、総ポリフェノール含量も測定した。官能評価は、2019年と2020年に滋賀大学教育学部の学生をパネルとして、調理ナスの味や好みについて5段階評点法により実施した。

    【結果・考察】DPPHおよびAAPHによる抗酸化性評価では、生と加熱調理のどちらにおいても、千両二号と在来ナス3品種との間に差は認められず、生より焼き調理で抗酸化性が高いことが明らかとなった(p<0.05)。総ポリフェノール含量においても、品種間に差は認められず、いずれの品種でも加熱調理後の方が生より高かった(p<0.05)。総ポリフェノール含量とDPPHラジカル消去活性との間には正の相関、総ポリフェノール含量およびDPPHラジカル消去活性とAAPHラジカル消去活性との間には負の相関が認められた。これらのことから、焼き調理で抗酸化性が高まることが示唆された。官能評価では、焼き調理後の杉谷なすびは他品種よりも渋みが強いと評価され、杉谷なすびの味の濃さは渋み由来であると考えられた。

  • −かぶの調理−
    清水 彩子, 丸山 智美, 佐宗 洋子, 盛興 美千代, 小山 晟矢
    セッションID: 1B-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】食品を通常気圧でない状態で加熱調理する方法として、加圧調理、真空調理、減圧調理などがある。加圧調理や真空調理の特性については多くの報告があるが、消火後に鍋内の気圧を低下させて調理する減圧調理の特性に関する報告はほとんどない。本研究では、減圧調理の特性を見出すことを目的とし、食塩の浸透と物性の変化について検討した。

    【方法】 愛知県産今市かぶの中心部を4㎝×4cmに切り出し、蓋に減圧弁のついた鍋(減圧鍋)および弁のついていない鍋(常圧鍋)を用いて家庭用ガスコンロでの加熱調理を行った。試料2個、蒸留水1200mL(20℃)、食塩120g、食紅1.0gをそれぞれの鍋に入れ、10分間強火で加熱した後消火し、コンロの上で10分および20分放置した。加熱後の試料は中心部を2cm×2cmに切り出し、外側部と中心部とに分けた。それぞれの試料に対し、食塩の浸透(デジタル塩分計,アタゴ)および物性(破断強度測定,RE2-33005C,山電)の測定を行った。

    【結果】 食塩は、消火後の放置時間10分、20分の試料いずれも常圧鍋よりも減圧鍋のほうが中心部まで浸透する傾向にあった。物性の変化については、試料の外側部では通常鍋と減圧鍋に差は認められなかったが、中心部では、消火後20分経過で最大荷重、破断荷重、破断応力が常圧鍋より減圧鍋の方が有意に小さかった。また、常圧鍋では消火後10分と20分経過後の物性に差は認められなかったが、減圧鍋では、消火後20分経過後の方が10分後より中心部の最大荷重、破断荷重、破断応力が小さかった。減圧鍋の調理では、消火後の減圧状態の継続により、常圧鍋よりも中心部まで食塩が浸透し、柔らかくなることが示唆された。

  • 髙岸 倫久, 秋山 聡子, 池田 昌代, 鈴野 弘子
    セッションID: 1B-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】野菜に多く含まれているポリフェノールやミネラルは,調理によりその量が変化することが報告されている。ヒトに対する機能性を期待するならば,調理後の食品に残存する量を明らかにする必要がある。本研究では,煮物を想定した調理後の根菜中のポリフェノールおよびミネラル残存量を検討した。

    【方法】試料は青首だいこん,水洗いごぼうを用いた。だいこんは厚さ2cmの半月切りにし,「本ゆでのみ(30分間)」,「水」または「こめのとぎ汁」で下ゆで(10分間)後,水ゆで(20分間)を設定した。ごぼうは「乱切り」または「斜め切り」にし,「水」または「酢水」で浸漬後,15分間水ゆでした。ポリフェノールはFolin-Denis法でクロロゲン酸当量として,Na,K,Ca,Mg量は原子吸光光度法,P量はモリブデンブルー吸光光度法で測定した。残存率は「切裁のみ」の量を100%として算出した。さらにUPLCを用いて調理後の試料に含まれる主要なポリフェノールを測定した。

    【結果】だいこんおよびごぼうに残存するポリフェノール量には,調理方法による有意差はなかった。また,ごぼう中には5-カフェオイルキナ酸以外にもカフェオイルキナ酸類縁体と推定されるピークが確認された。調理後のだいこんには,Caが85〜89%残存し,調理方法による有意差は認められず,NaとKの残存率は45〜54%,47〜57%であり,「本ゆでのみ」が最も高かった。MgとPの残存率は56〜70%,53〜70%であり,「こめのとぎ汁」が最も高かった。調理後のごぼうには, Naが57〜68%,Caが92〜97%,Pが67〜70%残存し,調理方法による有意差はなかった。KとMgの残存率は56〜65%,78〜84%であり,浸漬方法に関わらず「斜め切り」で高かった。

  • 渡壁 奈央, 水 梨恵, 濵 友紀, 松本 茜, 石橋 ちなみ, 杉山 寿美
    セッションID: 1B-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】加熱野菜(煮物)は固体に液体が分散したコロイド食品であり,その嗜好特性は加熱後も変化すると考えられるが,保存,再加熱過程の嗜好特性変化に関する研究はなされていない。本研究では,保存,再加熱過程の加熱野菜の体積,水分量,テクスチャー変化を加熱調味の影響も含めて把握し,嗜好特性への影響を検討した。

    【方法】2.5cm角の大根,人参,じゃがいも,茄子を沸騰させた蒸留水あるいは調味液(砂糖5%,塩2%)で30分加熱した。その後,加熱溶液中で一晩保存し,再加熱を行った。重量,体積は1試料ずつ測定し(ボルスキャンVSP300),水分量は3試料ずつでホモゲナイズして水分計で測定,内部(2cm角)のみの測定も行った。破断強度はくさび型プランジャーで繊維に直角に15mm(茄子は12mm)の圧縮で測定した。さらに,内部と外部にわけた試料のNa量も測定した。

    【結果】重量および水分量は大根,人参では水加熱,調味液加熱のいずれでも減少,保存で増加,再加熱で減少した。体積は加熱,再加熱では重量,水分量と同様に減少したが,保存では増加しなかった。じゃがいもでは,加熱時の重量減少が生じず,体積減少も小さかった。なすでは水加熱で重量,水分量はほぼ変化せず,調味液加熱では減少,体積減少が著しかった。破断強度は調味液加熱での保存,再加熱による低下が大根で著しかった。Na量はいずれの野菜でも外部は加熱,保存,再加熱時に増加,内部は保存時に大きく増加した。これらから,加熱時に野菜の水分は溶出し,保存時に加熱溶液の流入で増加すること,保存時の重量増加と体積増加は必ずしも一致しないこと,野菜内部のNa量はいずれの野菜でも保存時に増加し,調味液加熱で保存時の破断応力の低下が著しいことが示された。

  • 渡邊 直子, 佐藤 瑶子
    セッションID: 1B-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】調理品を適度な味付けの状態に仕上げるためには、食材への味のしみ込み方を理解する必要がある。一般的に分子量が大きいほど拡散係数は小さく、拡散しにくいと言われている。しかし、拡散物質の分子量と食材中の拡散係数の関係を調べた研究はみられない。そこで、本研究ではダイコンを用いて呈味成分および食品添加物として用いられる種々の成分の拡散係数を測定した。

    【方法】試料は青首大根中央部とし、2 ㎝角に成型して用いた。拡散物質として塩化ナトリウム(分子量:58.44)、クエン酸三ナトリウム(258.07)、コハク酸二ナトリウム(162.05, 以下DS)、酢酸ナトリウム(82.03, 以下SA)、酢酸(60.05)、グルタミン酸一ナトリウム(169.11, 以下MSG)、グリシン(75.07, 以下Gly)を用いた。それぞれ0.1 Mの溶液を調製し、沸騰水中で12分間加熱して細胞膜処理した試料を20℃で所定の時間浸漬し、試料中の濃度を測定した。さらに、三次元拡散方程式に基づくプログラム計算により拡散係数を算出した。

    【結果】20℃におけるダイコン中のみかけの拡散係数は、0.44×10-5〜1.02×10-5 cm2/sの範囲で拡散物質の分子量が大きいほど小さくなる傾向にあった。しかし、MSGとGlyは分子量が同程度であるDSとSAに比べてそれぞれ有意に小さかった。また、分子量と拡散係数の両対数プロットは直線関係が認められたが、MSGとGlyはこの直線から外れた。よって、アミノ酸系成分はダイコン中で他成分に比べて拡散しにくいことが示唆された。

  • 富澤 歩美, 阿部 雅子, 高梨 美穂, 長井 祐子, 小林 亘, 小澤 好夫, 綾部 園子
    セッションID: 1B-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】カリン果実は豊かな芳香を持つ果実であるが, 果肉が硬く強い渋みを持つため生食には向かず, 果実酒やはちみつ漬け, ジャム類(JAS規格におけるゼリー)として利用されている。カリンエキスゼリーは果実をアク抜きして熱水抽出したカリンエキスに砂糖を加え加熱すると美しい茜色に着色するが, その特性や茜色を呈する成分について不明な点が多い。そこで本研究ではカリンエキスゼリー(CJ)の物性と茜色への着色について検討した。

    【方法】カリン果実から熱水抽出したカリンエキスのペクチン量をカルバゾール法で測定した。CJはカリンエキスに果実質量30%(w/w)のスクロースを加え糖濃度50%(w/w)まで煮詰めて調製し, 色と物性および糖組成の変動とポリフェノール含量の測定をした。さらに, エキスのペクチンを除いた除ペクチンエキスと, それにスクロースを添加・加熱した除ペクチンCJエキスを調製し, 樹脂(アンバーライトXAD-7)の吸着画分と非吸着画分に分離した。各試料の色とポリフェノール含量の測定をした。

    【結果】エキスのペクチン量は170.1 mg/100g(FW)で, その98%は水溶性ペクチンであった。CJはゲル化し, 物性はヨーグルトに近い値であったが, 加熱したエキスと除ペクチンエキスはゲル化しなかった。a*値は, CJで高く, 除ペクチンCJ吸着画分はさらに高かった。エキスに加えたスクロースは, 加熱中経時的に減少し, グルコースおよびフルクトースが増加した。エキスの総ポリフェノール量は1668 mg/100g(FW)であった。画分別では除ペクチンCJ吸着画分で最も多く, 非吸着画分で最も少なかった。除ペクチンCJ吸着画分でポリフェノール量が多く, a*値も高いことから, 茜色着色とポリフェノールの関係が示唆された。

  • 森井 沙衣子, 白杉(片岡) 直子, 佐藤 春実, 坂本 薫
    セッションID: 2A-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】米の吸水率は浸漬温度が上昇するとともに増加する吸水曲線が一般的である。しかし、筆者らは米を短時間浸漬させた場合では温水浸漬が低温浸漬よりも米の吸水率は高くなるが、長時間浸漬させると、低温浸漬が温水浸漬よりも吸水率が高くなることを明らかとした。また、この現象が米粉には見られず米粒に特有であったことから、浸漬温度の異なる米粒は表面部のでんぷんの状態に差異があることが推察される。そこで、浸漬温度の異なる米の吸水メカニズムを明らかにするため、米の吸水率に影響を与えると推察される米粒表面部のでんぷんの変化について検討することとした。

    【方法】5°C、40°Cの水で0分(洗米後)、20分、90分、4時間浸漬させた試料米(兵庫県産ヒノヒカリ)から、米粒表面部試料、表面部以外(中心部)試料を調製した。測定はX線回折(XRD)、BAP法、フーリエ変換型赤外分光光度計(FT-IR)、示差走査熱量分析計(DSC)を用いて行った。

    【結果】米粒中心部のでんぷんの結晶性に大きな変化はみられなかったが,40°C浸漬の米粒表面部のXRD回折強度がわずかに高くなっていた。BAP法ではそれぞれの試料間に差はみられなかった。FT-IR の結果、40°C浸漬米の表面部試料では5°C浸漬米のそれより会合型のOH基が増えたことを示した。DSC測定では、40°C浸漬米の表面部の糊化ピーク温度は生米より低温に移行していたが、糊化開始温度は高い傾向がみられた。また、40°C浸漬米のDSC曲線は生米と5°C浸漬米より吸熱ピークが鋭くなっており、40°C浸漬米のDSC曲線は生米と5°C浸漬米の表面部のそれとは異なっていることが明らかとなった。

  • 渋沢 ひかり, 大石 恭子, 大田原 美保, 佐藤 瑶子, 香西 みどり
    セッションID: 2A-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】玄米の糠層は疎水性成分が多いため精白米と比べて炊飯過程での吸水,糊化が進みにくく,食味改善として長時間浸漬や加圧炊飯,加工玄米の利用等の工夫がなされている。約300年前に秋田県で発祥した「びっくり炊き」は加熱途中のさし水添加で玄米の吸水を促す特殊炊飯法であるが,本法に関する科学的研究は皆無である。本研究では炊飯時のさし水添加が玄米の吸水,飯の物性に与える影響を実験的に解明することを目的とした。

    【方法】平成30年度宮城県産のひとめぼれを玄米試料とした。文献調査および予備実験により,総加水比2.3とし,米の1.2倍の水で加熱を始め,10分後に沸騰,沸騰継続10分後に米の1.1倍のさし水(水温0,20,98℃)を加え,再沸騰後20分間加熱,消火,蒸らしを行った。加熱過程で採取した米の吸水率,溶出固形物量の測定を行い,色素添加炊飯液を用いて外皮破裂に伴う胚乳露出面積率を画像解析により求めた。飯の物性測定(テクスチャーアナライザー,一粒法)および糊化度測定(BAP法)も行った。

    【結果】0,20,98℃のさし水添加直後の炊飯液は,それぞれ約52℃,63℃,98℃であり,再沸騰後の米粒の吸水率,胚乳露出面積率および液中の溶出固形物量は0℃,20℃条件が98℃条件よりも有意に増加した。さらに0℃条件の飯のみ,98℃条件よりも有意に軟らかくて粘り,糊化度が高い傾向があった。以上より,さし水添加による急激な温度低下は玄米外皮の破裂を促し,胚乳への吸水およびデンプンの糊化と溶出を増大させ,飯の物性を改善した。経験的に行われている「びっくり炊き」が玄米の低吸水性を克服できる手軽で実用的な方法であることが実験的に確認できた。

  • 福原 美鶴, 大田原 美保, 大石 恭子, 佐藤 瑶子, 香西 みどり
    セッションID: 2A-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】演者らは,白飯の初期老化の評価法として圧縮米粒法を提案し,炊飯直後と冷蔵後の差異が圧縮米飯粒の画像解析による視覚情報で表現され,官能評価や力学的物性と高い相関があることを報告した。本研究では,本法を玄米飯に適用して炊飯直後および初期老化の特徴を明らかにし,さらに物性,糊化度の測定から圧縮米飯粒法との関連を調べることを目的とした。

    【方法】吸水特性の異なる3品種の玄米(金のいぶき,たきたて,ひとめぼれ)を試料とし,加水比1.5,浸漬時間1および24時間の条件で炊飯した飯,さらに飯を4℃で18時間冷蔵した飯を調製した。炊飯直後および冷蔵後の玄米飯の皮及び胚芽を除去し,1粒ずつ圧縮米飯粒プレパラート(テクスチャーアナライザーにより荷重をかけて0.1 mmに圧縮)を作製し,色測定(L*),顕微鏡(BZ-X700, KEYENCE)および付設の画像解析アプリケーションによる解析を行った。さらに飯の物性と糊化度の測定を行った。

    【結果】たきたて及びひとめぼれの1時間浸漬,炊飯直後の飯には炊き残り水が観察された。玄米飯でも白飯に類似した圧縮米飯粒画像の輝度ヒストグラムが得られ,冷蔵による低輝度側へのシフトはひとめぼれが大きい傾向であった。さらに,白飯では見られない低輝度側の小ピークが観察されたため,輝度30をしきい値として2値化した結果,低輝度の部分は飯の中心部にあることが明らかとなり,芯飯のように糊化が不十分な状態と推察された。また,初期老化の指標となる輝度130以下の面積率とL*は,糊化度との相関が高かった。以上より,圧縮米飯粒法は,玄米飯の初期老化に加え飯内部の糊化の不均一さを視覚的・数値的に評価しうる可能性が示唆された。

  • 巴山 澪, 森井 沙衣子, 坂本 薫
    セッションID: 2A-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】酒造好適米(酒米)は、食用米と比較して米粒の中心にデンプンからなる心白(しんぱく)という白色不透明の構造がある。心白は、雑味の原因とされる脂質やタンパク質の含量が少なく、菌が入り込みやすく麹を作りやすいため酒造りに適しているといわれている。山田錦とコシヒカリは同等の良食味性を有するという報告もあるものの、酒米は米飯としては活用されていない。そこで本研究では、兵庫県産酒米「山田錦」の食用としての用途を探ることを目的として実験を行った。

    【方法】酒米として2019年産兵庫県産山田錦、食用米として2019年産兵庫県産きぬむすめを用いた。炊飯は、酒米、食用米ともに精白米の1.5倍量の水を加え、家庭用IH炊飯器にて行った。また、炊飯以外の米の加熱加工として、穀類膨化機を使用した米膨化試料も調製した。還元糖はソモギ-ネルソン法、全糖はフェノール-硫酸法にて測定し、アミロース割合の測定はヨウ素呈色法を用いた。テクスチャーはクリープメーター(RE-3305S(株)山電)を使用して測定を行った。

    【結果】米飯の炊き増し比は、山田錦2.40倍±0.01、きぬむすめ2.34倍±0.01となった。米飯試料の全糖量、還元糖量は山田錦が有意に多かった。アミロース割合に有意差はなかった。硬さは炊飯直後の山田錦米飯がきぬむすめ米飯よりも有意に硬い結果となったが、付着性、凝集性には差はなかった。米膨化試料は精白米の約10倍の大きさに膨化し、山田錦の全糖量が有意に多かった。これらの結果から酒米と食用米では異なる加工特性があると考えられ、酒米の炊飯や膨化の加熱加工特性を検討しその特性を生かすことにより、適した加工条件を見出すことができると考えられた。

  • 羽石 悠里, 古庄 律, 山内 淳, 小暮 更紗, 石田 裕, 田島 淳, 豊原 秀和, 野口 智弘, 岩本 純明, 杉原 たまえ, 谷岡 ...
    セッションID: 2A-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】ブレッドフルーツ(BF)は主に熱帯地域で栽培されている澱粉を主成分とする伝統的な食料資源であるが、限られた収穫期や生BFの保存性の低さから、多くが廃棄されている。この課題解決には、BFの新規利用性や味の特性を明らかにすることが重要である。また、本課題の解明は、将来の世界的な食料危機に備え、主食候補の一助になりうると考える。一般に生の食物を乾燥し粉にすると保存性が高まるが、BF粉末やBF粉末を用いた料理の特性に関して不明な点が多い。そこで、小麦粉と比較することでBF粉末の味の特性を明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料はBF果実の皮と芯を除き粉末にした生BF、生BFを蒸した後粉末にした蒸BF及び市販小麦粉を使用した。味の特性評価には味覚センサー(TS−5000Z)を使用し、官能評価は各試料のトルティーヤを調製し、嗜好型及び分析型で評価を行った。少糖類はゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定した。苦味は総ポリフェノール(TP)含有量を測定し、味覚センサーと官能評価との相関性を評価した。

    【結果・考察】味覚センサーで分析した結果、苦味の後味と塩味が生及び蒸BFで有意に高かった。分析型官能評価において、苦味は3つの試料間で有意差が見られ、BFは苦味が強いことが明らかとなった。嗜好型官能評価では蒸BFの香りが小麦粉に比べ有意に好まれた。生及び蒸BFにはスクロース及びTPが多く含まれ、TP含有量と味覚センサーによる苦味の後味には非常に強い相関性がみられた。以上の結果より、BFは苦味や塩味に特徴があり、スクロース含有量が高いことから、調理の際、調味料を減らし、健康的な食材としての利用価値が高まることが明らかとなった。

  • 森田 亜紀, 早川 文代, 香西 みどり
    セッションID: 2A-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】市販パン酵母はパン製造に重要であり強い発酵力を有するが,野生酵母と比較して風味に特徴が少なく,市販パン酵母の風味の違いに着目した研究はほとんどない.本研究では,市販パン酵母を用いて簡易パン種を作成することで酵母の発酵成分を増大させ,パンの風味に特徴を持たせることを目的とした.またパンの香りの特徴を官能評価で評価し,香りのイメージを色彩に置き換えて表現することでパンの香りの特徴を第三者にわかりやすく伝える手段について検討した.

    【方法】9種の市販パン酵母(生イースト8種,ドライイースト1種)を用いて簡易パン種を作成し,これらを添加したパンを試料とした.パンの成分分析(有機酸,遊離アミノ酸,香気成分)および三菱商事ライフサイエンス㈱鰍フ分析型パネル15名により香りに関する官能評価(CATA法、色彩評価)を実施した.色彩評価は,新配色カード199より抽出した35色からパンの香りのイメージに合致する色を選択させた.

    【結果・考察】簡易パン種を配合した9種のパンの成分には特徴があり,主に酵母由来のアミノ酸量と酵母の発酵力に由来する香気成分に違いが見られ、ドライイーストは菌体からアミノ酸が漏洩しやすかった.香気成分の多い酵母は,本研究の製パン配合(糖濃度5%)において発酵力が強いと考えられた.パンの香りの官能評価では,発酵香は青,甘い香りは赤,橙,こうばしい香りは橙,明度の高さ,と相関があり、香りのイメージを色彩で表現できることが示唆された.本研究により,市販酵母を用いた簡易パン種によるパンの成分と風味の特徴が明らかになり,またその香りのイメージを色彩で置き換えた表現がパンの特徴を消費者にわかりやすく伝える手段として提案できる可能性が示唆された.

  • 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 2A-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】本研究では多孔質であるために食べにくいとされているパンに、異なる力学的特性を有するソース(液状食品)を付加することが、パンの力学的特性、および食べやすさに与える影響について検討した。

    【方法】パンクラムに蒸留水、増粘剤添加溶液、増粘剤添加溶液の容量50%を植物油、乳化剤に置き変えた植物油乳化溶液、および植物油のみを浸漬させたパン試料を調製した。浸漬に用いた溶液の流動特性、浸漬パン試料の吸水率、1回圧縮後の離水率、破断特性、テクスチャー特性、咀嚼・嚥下筋電位測定、および官能評価を行った。

    【結果・考察】浸漬溶液の流動特性は蒸留水、植物油はいずれもニュートン流体であった。増粘剤添加溶液、植物油乳化溶液の粘性率は蒸留水、植物油よりも大きく、植物油乳化溶液の流動性指数は増粘剤溶液よりも大きなものとなった。吸水率は蒸留水試料が最も大きく、植物油試料が最も少ない。離水率は蒸留水試料が最も大きく、増粘剤溶液試料、植物油乳化溶液試料は少なかった。圧縮率25%における応力、テクスチャー特性の硬さはいずれも植物油試料が大きく、蒸留水試料は小さいことが示された。増粘剤添加溶液試料の付着性は最も大きいものとなった。筋電位測定の結果、咀嚼回数は蒸留水試料が最も少なかったが、咀嚼筋活動時間、筋活動量は植物油乳化溶液試料が小さいものとなった。咽頭音、嚥下時筋電位測定結果より、蒸留水試料は咀嚼開始直後に分離された蒸留水を嚥下していることがわかった。官能評価の結果、蒸留水試料は口中で浸漬液が分離しやすく、まとまりにくいと評価された。一方、植物油乳化溶液試料はまとまりやすく、飲み込みやすいと評価された。

  • 近藤 翼, 谷口 明日香, 荒木 萌, 二山 幸子, 小林 理恵
    セッションID: 2A-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】これまでに雑穀粉を使用した天ぷら衣の健康機能性を検討した中で,普通ソバ(ソバ全層粉)は小麦粉に比べ高い抗酸化能を示した。その一方で,衣としての色の嗜好性は低かったため、使用するソバ粉の配合には工夫が必要である。高い抗酸化能を維持しつつ嗜好性を向上させるため,ソバ全層粉を色の白い普通ソバ内層粉(ソバ内層粉)に代替えし,食用ソバの中でも抗酸化成分のルチンを豊富に含む韃靼ソバの配合が有効であると考えた。すでにソバ内層粉に韃靼ソバ粉を配合した天ぷら粉製品(市販粉)が開発されているが,その抗酸化能と嗜好性は明らかでない。本研究では市販粉を含む各種そば粉で調製した揚げ衣の抗酸化能を比較し,ソバ内層粉および韃靼ソバ粉の配合効果を検証した。

    【方法】市販粉(㈱日穀製粉),ソバ内層粉,ソバ内層粉,韃靼ソバ粉の4種類の揚げ衣の抗酸化能を比較した。各揚げ衣は凍結乾燥後,70 v/v%エタノール溶液を用いて 37 ℃で 30 分間加熱抽出を行い,その上澄みを測定試料とした。抗酸化能は,SOD様活性およびペルオキシルラジカル捕捉活性から評価した。

    【結果・考察】市販粉で調製した揚げ衣の抗酸化能は,SOD様活性で 70.0 U/mL,ペルオキシルラジカル捕捉活性で 5.6 mmol TE/100 gであった。これらの値は韃靼ソバ粉揚げ衣より低かったが,ソバ全層粉揚げ衣(77.3 U/mL,5.9 mmol TE/100 g)と同等な値を示し,ソバ内層粉に韃靼ソバ粉を配合することで、高い抗酸化能を保持した揚げ衣を調製できることが明らかとなった。抗酸化能のみならず,外観もソバ全層粉揚げ衣の灰褐色と比較して,天ぷら衣としての色の嗜好性が期待できる。今後,韃靼ソバ粉の配合効果を嗜好性評価からも検討する予定である。

  • 笠岡 誠一, 古野 麻衣子, 佐野 貴士
    セッションID: 2A-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】消化酵素に抵抗性を示すでんぷん(レジスタントスターチ, RS)は食物繊維と同様に腸内環境を改善すると考えられているが,調理直後や保存状態による食品中RSの変化の知見は少ない。そこで種々のでんぷん性食品の加熱直後,1時間室温放置後,また電子レンジで再加熱した後のRSを測定した。

    【方法】乾麺のスパゲッティ1束(100g)を1Lの沸騰湯浴中で7分間加熱した。同様に乾麺のそうめん1束(90g),ゆでうどん1袋(180g),生中華麺1袋(141g)をそれぞれ加水加熱した。加熱後1時間室温で放置した。米200gに1.5倍の水を加え60分の浸漬後電気炊飯器で炊飯した。1時間室温放置した後電子レンジで再加熱,または熱湯を注ぎ10分間室温放置した。炊きたて米飯を24時間冷凍庫に保存した。取り出した冷凍米飯を電子レンジで再加熱,また再加熱後室温で4時間放置した時のRSも測定した。亀井らの方法1) に従い粉末化した試料をAOAC公定法により測定した。

    【結果】1時間の室温放置でRSは,スパゲッティで2.0倍,そうめんで1.5倍,ゆでうどんで1.1倍,生中華麺で2.2倍に増加した。炊きたて米飯を1時間放置するとRSは2.9倍に増えた。それを電子レンジ再加熱や,熱湯を注いで10分間の室温放置でもRSは維持されていた(1時間室温放置後RSに対し93%, 95%)。炊きたて米飯を24時間冷凍庫に保存するとRSは2.1倍に増えた。それを電子レンジ再加熱や,再加熱後の室温放置でRSはさらに増加した(24時間冷凍庫保存後のRSに対し117%, 139%)。老化したでんぷん(RS)を電子レンジで再加熱しても元の糊化でんぷんには戻らないことが示唆された。

    1) 亀井文ら, 宮城教育大学紀要(2016) 50, 165-170

  • 佐々木 琴美, 島田 良子, 吉村 美紀
    セッションID: 2A-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】大豆たんぱく質(SPI)はアミノ酸価が高く、栄養学的、生理学的に優れたたんぱく質である。レジスタントスターチ(RS)は、ヒトの小腸で分解されずに大腸に達し腸内細菌によって分解される食品成分であり、食物繊維と類似した生理効果を有している。これまで、小麦粉・大豆たんぱく質・米粉混合系クッキーについて検討してきた。本研究では、RSを混合し、物性、嗜好性、咀嚼性への影響について検討した。

    【方法】小麦粉・大豆たんぱく質・米粉混合系クッキー(WF+SPI+RF)をコントロールとした。RS混合系クッキーは、コントロールの米粉の一部をRSに置き換えた。RSはハイアミロースコーンスターチ(RS1)、リン酸架橋タピオカデンプン(RS2)、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカデンプン(高置換)(RS3)、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカデンプン(低置換)(RS4)の4種類を用いた。クッキーは縦・横30 mm、厚さ4 mmに成形し、180℃で11分間焼成した。測定項目は、表面色、破断、吸水率、密度、SEMによる構造観察、官能評価、筋電位測定とした。

    【結果】表面色は、RS混合系クッキーはコントロールと比較し、焼き色が薄い傾向にあった。破断測定は、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカデンプン(高置換)に置き換えたクッキー(RS3)が、すべての測定項目において有意に大きく、硬くサクサクと砕けやすくなった。吸水率、密度には有意な差はみられなかった。SEM観察では、すべてのクッキーで澱粉粒が観察された。官能評価では、硬さ・もろさ・総合的なおいしさの項目でコントロールよりもRS3は高いと評価された。筋電位測定では有意な差はみられなかった。

  • 石橋 ちなみ, 上野 聡, 谷本 昌太, 杉山 寿美
    セッションID: 2A-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】澱粉の老化が生じると,一般に硬い物性になることが知られているが,老化による物理的な構造変化(ゲル構造や結晶構造の形成)との関連性は詳細に解明されていない。本研究では,濃度の異なる小麦澱粉ゲルの保存に伴う物性の変化に,老化澱粉の結晶化過程が与える影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】ゲルの調製は,小麦澱粉の濃度が15%,30%になるように澱粉−水混合物を調製し,シート状に広げて加熱糊化した(以下,15%ゲル,30%ゲル)。保存温度は4℃,保存時間は3時間から最大7日間とした。テクスチャー測定では,針状プランジャーで貫通試験を行い,最大応力,破断歪を求め,示差走査熱量測定(DSC),動的粘弾性測定も行った。

    【結果】テクスチャー測定の結果,30%ゲルは,保存3日目までは,保存時間の経過とともに最大応力および破断歪は有意に低下した。保存3日目以降は,最大応力は急激に増加した一方,破断歪は変化が認められなかった。15%ゲルは,経時的な変化は小さいものの,保存時間とともに緩やかに最大応力が増加し,破断歪はほぼ変化しなかった。DSCでは,30%ゲルは保存1日目,15%ゲルは保存3日目に老化澱粉の結晶の融解ピークが認められた。動的粘弾性測定の周波数依存性においても,保存により低周波数域のG’,G’’の傾きが緩やかになり,安定した構造へと変化していた。以上より,30%ゲルでは,老化澱粉の結晶化過程でゲルの物性が変化しており,結晶化初期(保存1日目)では脆く,その後結晶化が進むにつれて硬くなると推察された。一方,15%ゲルは結晶化に伴う物性の顕著な変化は認められず,澱粉濃度の違いによって,老化澱粉の結晶化過程がゲルの物性に及ぼす影響が異なることが明らかとなった。

  • 山本 剛優, 伊藤 政喜, 奈良 一寛
    セッションID: 2A-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】不溶性食物繊維を多く含む全粒穀物の摂取が、冠状動脈疾患のリスク低減に有効であることが報告されている。スナック菓子の原材料としても多く利用されているトウモロコシも食物繊維の豊富な全粒穀物の一つであることから、その利用が期待される。一方でトウモロコシでは、多糖類にフェルラ酸がエステル結合して存在することが明らとなっているが、穀粒の形や性質による差異については十分に明らかではない。そこで本研究では、トウモロコシ多糖類の微細構造の差異について明らかにするため、トウモロコシの種類さらにはそれらの加工品におけるフェルラ酸量の差異について調査した。

    【方法】トウモロコシ(ポップ種、デント種、ワキシー種)およびトウモロコシ加工品(ポップコーン、コーングリッツ、フライ製品)を材料とした。粉砕した試料を一定量はかりとり、1M水酸化ナトリウムを加えアルカリ処理することでフェルラ酸を遊離させ、遊離したフェルラ酸をHPLCにて測定した。

    【結果・考察】デント種とワキシー種においては差が認められなかったが、ポップ種においては顕著に多かった。ポップ種はバタフライ型とマッシュルーム型に分類されるが、バタフライ型において、よりフェルラ酸が多いことが明らかとなった。コーングリッツおよびコーングリッツを使用したフライ製品では原料に比べ顕著に減少していた。一方で、ポップコーンは加工後も原料と同程度のフェルラ酸が残存していることが明らかとなった。

     以上のことから、トウモロコシ及びその加工品では、種類や加工法によってフェルラ酸に差異が見られることが明らかとなった。中でもポップコーンは、フェルラ酸が多いことから、その摂取源としては有用な素材であることが示唆された。

  • −食品のにおいのメタボロミクス分析−
    前田 竜郎, 田中 理祥, 吉川 凜, 藤谷 篤志, 山本 万里
    セッションID: 2A-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】 食品中に含まれているにおい成分や呈味成分を網羅的に分析し、食品の美味しさ品質や製造工程で生成する生成物などを調べる客観的な評価手法としてメタボロミクス技術が活用されている。植物性ミルクは栄養面では牛乳に比べ、低カロリー・低脂肪で、カルシウム・ビタミンが豊富である。また、穀物に豊富に含まれる食物繊維は、肥満や糖尿病や心臓病になるリスクを低下させることが報告されている(2003 FAO/WHO)。しかし、植物性ミルクのにおい(香り)に関する品質特性の解明は十分でない。本研究の目的は、植物に含まれているにおいを網羅的に分析し、植物性ミルクのにおいのプロファイルを解明することである。

    【方法】分析試料は代表的な穀物・疑似穀物由来ミルク、市販されている植物ミルクを対象とした。穀物・疑似穀物は水浸漬、ミキサー粉砕後ろ過し、ガラスバイアルに密封した。においの捕獲は、Gerstel MPS robotic pro(Gerstel,独)により、SPMEファイバー(DVB/CAR/PDMS)、DHSを用いた。においの分析は、Pegasus BT-4D GC×GC-TOF分析(LECO,米国)に供した。第1次元はInertCap Pure-WAX、第2次元はInertCap 5MSを用いた。得られたクロマトグラムからChromaTOFソフトウエア(LECO,米国)の自動解析機能によるデコンボリューションによるピーク検出、NISTおよびWileyによるライブラリー検索を行った。

    【結果・考察】 GC×GC-TOFによる網羅的分析法と多変量解析を組み合わせた手法により、植物性ミルクに含まれている多種多様なにおいを包括的に分析し、植物性ミルクのにおいプロファイルを明らかにした。

  • 林田 日菜子, 岩田 真穂, 松下 実代, 清水 達也, 小山 鐘平, 山崎 英恵
    セッションID: 2A-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】近年味覚に関する調査研究において、若い世代は濃い味わいを好む傾向が報告されている。味覚の感受性は、日常的な食事が少なからず影響していると推察されるが、個々の食品、特にその継続的な摂取がどのような影響を及ぼすかについては、十分な検討がなされていない。本研究では、和食の味わいの基盤となる出汁に着目し、その継続的摂取が大学生の味覚に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした。

    【方法】龍谷大学の学生男女22名を対象とし、出汁を飲む群・出汁を飲まない群に分けて実施した。実験期間は3週間とし、週に1回味覚閾値検査を実施した。1週目は両群とも出汁を飲まず、2週目からは出汁を飲む群に鮪節と昆布の合わせ出汁パックを渡し、一日あたり135mL、2週間継続飲用してもらった。味覚閾値検査用の試料は甘味(スクロース)、塩味(塩化ナトリウム)、酸味(酒石酸)、苦味(塩酸キニーネ)、うま味(グルタミン酸ナトリウム)を10段階で濃度調整した。各試料を低濃度から飲んでもらい、味を感じた時点で回答してもらった。被験者の回答が正解の場合、その濃度を認知閾値と判断した。

    【結果】甘味以外の4味は、出汁摂取に関わらず全体的に味覚閾値が低下する傾向を示した。うま味では出汁を飲まない群の認知閾値が2週目・3週目で有意に低下した。苦味は両群が3週目に有意な低下を示した。塩味・酸味は個人差が大きく、有意な差は検出されなかった。

    【考察】 出汁の摂取に関わらず、全体的に味覚閾値が低下したのは味覚検査による学習効果が大きいと推察される。特にうま味については単独で味わう機会が少なく、認識されていくい味であることから、味覚検査での経験の蓄積が少なからず影響したのではないかと考えられる。

  • 湯浅 正洋, 迫井 千晶, 山田 研, 秋元 真一郎, 来島 壮, 石川 伸一, 冨永 美穂子
    セッションID: 2A-15
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】ビーフコンソメは,ブイヨンに牛肉や野菜を加えて煮込んで調製する,透き通った琥珀色のスープである.その調製は,食材を長時間煮だす必要があるが,お湯で溶いて手軽に使用できる粉末状の製品も市販されている.これら手作りや市販ビーフコンソメの呈味特性は異なると考えられるが,その詳細は不明な点が多い.本研究では,コンソメの呈味特性に関する基礎資料を得ることを目的に,プロの料理人が調製したビーフコンソメと市販品の呈味特性を比較した.

    【方法】プロの料理人は一流シェフを多数輩出している料理学校に所属する熟練者2名を選定し,市販の液体ブイヨンをベースとして,基本的な調製方法・食材の種類と重量・出来上がり重量の目安量を統一してビーフコンソメを調製した.市販品は粉末状のビーフコンソメ3種を表示の分量に従い沸騰超純水で溶解した.分析項目は,味覚応答(味認識装置)と呈味成分(食塩相当量,遊離アミノ酸類,核酸類,糖類,有機酸類および脂肪酸類)の濃度を分析した.分析結果を,ブイヨン,料理人のビーフコンソメならびに市販間で比較して,その呈味特性を評価した.

    【結果・考察】料理人のビーフコンソメはブイヨンと比べ,酸味・旨味・塩味が増したが,調製に用いた食材由来の食塩,遊離アミノ酸類,核酸類,糖類及び有機酸類が顕著に増加したためだと考えられた.市販品はブイヨンに近い味覚応答を示したが,これは遊離アミノ酸類,糖類および有機酸類の濃度が低いためだと考えられた.市販製品間で比べても,食塩相当量,L-グルタミン酸,核酸類,スクロース,コハク酸および脂肪酸類の濃度に差異があり,製品間で主要な呈味成分が異なることも明らかとなった.

  • 冨永 美穂子, 迫井 千晶, 山田 研, 秋元 真一郎, 来島 壮, 石川 伸一, 湯浅 正洋
    セッションID: 2A-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】料理においては常に再現性が求められ,材料・分量および方法を統一し,規定された条件の下,その差異について比較分析し,客観化(数値化)していくことが主流である.しかしながら,細かな実験条件下での差異の知見は実践の現場である料理人の技術の向上や料理の応用展開に役立つ理論の提供に貢献できないと考えられる.そこで,おいしい料理を基点に客観化を検討することとし,熟練者と非熟練者の牛肉ベースのコンソメスープをサンプルに分析評価を試みた.

    【方法】調理経験25年以上の料理人2名(熟練者),調理経験3年程度の若手料理人および料理学校学生,各1名(非熟練者)に材料・分量のみを規定し,市販の液体ブイヨンをベースに各調理者に渾身のコンソメスープを調製してもらった.調理中の様子を録画するとともに,最終収量,pH,塩分,Brix,遊離アミノ酸類,核酸類,有機酸類,糖類,脂肪酸類,味覚応答,香気成分などを分析比較した.また,料理学校所属の教職員および学生15名に官能評価を行い,嗜好性を評価した.

    【結果】成分分析において,pHおよび脂肪酸類を除き,調理者間にスープの収量および成分含量差が認められ,Brix,遊離アミノ酸総量,有機酸類総量は熟練者の方が多い傾向にあった.特に若手料理人の調理方法に特徴が認められ,最終収量および種々の成分含量に影響している可能性が示唆された.一方,官能評価において,被験者のおいしいスープのイメージはほぼ一致したが,各スープに対する嗜好性の評価は分散し,総合評価に有意差は認められなかった.

  • 藤田 萩乃, 川合 健太
    セッションID: 2B-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】ソーラークッカーは無電源で使える調理器具として,インフラの整わない地域や災害時の煮炊き用途として知られている。しかしながら,高価で,広い保管場所必要とし,専門の知識がなければ使うことができないため,一般消費者が日常的に使用するような調理方法ではなかった。そこで,誰でも簡単に使える新しいソーラークッカーおよび専用調理容器を開発し,環境に優しい調理法として提示する。

    【方法】安全で安価であること,直感的に使用でき,保管場所を取らないこと,おいしいこと,高性能であること(短時間で調理できること),を開発のコンセプトとした。ソーラーパネルの製作には安価に製作するため市販のビニール傘の中骨を流用した。パネル部はレトルトパウチ用のアルミニウム包材を用い, 1/8パーツを放物線形状にヒートシールして製作した。調理容器もまたレトルトパウチ用包材を使用した。焦点における焼損を防ぐためドーナッツ形状とし,傘の柄の部分に巻き付け,放物線の焦点を含む平面が調理容器の最下部に配置できる設計とした。調理容器には沸騰したときに破裂を防ぐ蒸気抜き機構を装着し安全に配慮した。

    【結果】200gの水を調理容器に封入後,ソーラークッカーに設置し,晴天時に加熱試験を実施したところ,約12分で60℃に到達し、約60分で95℃に到達した。ホットベンダーで供給される缶コーヒーの温度が60℃程度であり,レトルト済みのパウチを温め直す用途としては十分に利用できる。同様に約200gに調整したお汁粉(白玉,おしるこ汁),おかゆ(アルファ化米,サラダチキン,ネギ,水)を60℃まで加熱したところ,おいしく食することができた。今後は複数人向けの容量の大きい調理容器を開発する他,オーブン料理や焼き調理ができるよう開発していく。

  • −熟練度別人間工学的考察−
    中島 君恵, 中島 みづき, 佐藤 健, 江川 賢一
    セッションID: 2B-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】本研究は、アレルギー食の調理作業における、熟練者(教員)と初修者(学生)の人間工学的作業分析(モダプツ法・筋電図法)を行うことを目的とした。

    【方法】本研究では、調理動作中の一連の人間工学的評価を行うため、人参の千切りとオムライス調理(アレルギー食・通常食)を行なった。被験者は2名(熟練者(教員, 身長 156cm), 初修者(学生, 身長 157cm))である。測定評価項目は、作業姿勢評価、筋活動評価、作業効率評価とした。作業姿勢評価は、WEBカメラで身体全体の動きを撮影し作業姿勢を観察・分析、主要な作業における首・肘、膝の角度算出を行なった。筋活動評価は、各被験者の左右腕橈骨筋、左右上腕二頭筋の筋活動をサンプリング500(Hz)で測定し、積分筋電図(iEMG)を算出した。作業効率評価は、作業ごとに時間を尺度として評価するモダブツ法を用いて、一連の調理動作における各動作時間を分析した。

    【結果】アレルギー食調理に対し、3つの人間工学的作業分析を行い、熟練者と初修者間の差が確認された。作業姿勢評価より、初修者は熟練者に比べ前傾姿勢での作業が確認された。筋活動評価においては、初修者は熟練者よりも2倍近く筋活動が確認され、熟練者の筋活動が確認されない作業でも筋活動が確認された。作業効率評価では、全作業時間において初修者は熟練者の1.6倍の作業時間を有していた。特に、玉ねぎのみじん切りなど包丁を使う作業では、熟練者の方が作業時間は短かった。しかし、フードプロセッサーなど機械を使う作業では作業時間の差は確認されなかった。本研究の結果より、調理工程の増えるアレルギー食調理を初修者が行う際は、作業効率などの観点から調理への機械の組込が有効である。

  • −包丁操作の熟練因子−
    由良 亮, 藤岡 美香, 萩原 勇人, 楠瀬 千春
    セッションID: 2B-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】包丁操作を含め手道具の取扱には熟練を要する。しかし、その妙は感覚的なものであり、その修得因子と呼べるものは明確とはなっていない。我々は、その因子を探るべく、包丁操作の詳細な時系列データを収集し、分析を行なってきた。そして、2019年度の報告において、SVM(サポートベクトルマシン)による機械学習を行い、包丁操作の修得にかかる因子の推定を行なったところ、上げ下げを行うピッチ、ひねりを行うロール、刃先のブレに対応するパラメータが選定された。本報告では、その分類器の解析により明らかとなった特徴点について報告する。

    【方法】6軸モーションセンサーによる包丁操作の記録から、それぞれの平均値・標準偏差・4分位点、および周波数特性を含め、計234点の特徴量を算出した。この特徴量を元に、主成分分析を行い次元集約を行なった。これを機械学習であるSVMにより、学習者と熟練者を分類する学習を行なった。そして、その分類器および因子負荷量を解析した。

    【結果・考察】学習に利用する主成分を増減し、学習者と熟練者の分類を行なったところ、第3成分以降は、分類に貢献していなかった。そこで、第1,2主成分を確認したところ、第1は切断方向の運動の得点が大きく、第2成分はブレの成分が正の得点、切断方向は負の得点だった。また、サポートベクトルを解析したところ、学習者の第1成分の因子負荷量は負であり、熟練者は正の割合となるが、第2成分は熟練者のみ負の値を取る場合が多かった。

     以上のことから、第1成分が熟練の因子であり、第2成分が未熟の因子となる可能性が示された。本研究はJSPS科研費 JP17K19942の助成を受けたものです。

  • 明神 千穂, 服部 亜香里, 中濵 琴乃, 小澤 一哉, 前田 佐江子, 櫛 勝彦, 湯川 夏子
    セッションID: 2B-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】先行研究において、料理活動が認知症高齢者の行動・心理症状(BPSD)及びQOLの改善に効果があることが認められた。現在、より効果的な支援方法について、検討を進めている。本研究では、料理療法の支援スタッフへの教育プログラムの開発を目的に、認知症高齢者による料理活動の動画を分析し、支援スタッフによる支援と参加者の“行動”及び“発言”の関係性について検証を行った。

    【方法】認知症高齢者Aグループホームにおける料理活動を撮影したビデオ( カレー, 巻き寿司 )を分析し、支援スタッフによる支援と参加者の“行動”及び“発言”の切片化を行った。次に支援スタッフの働きかけが料理活動参加者にどのような影響を与えたのかを明らかにするために、ビデオ・エスノグラフィーを用い、その関係性について解析を行った。

    【結果】料理活動中、参加者が自発的に他の参加者へ料理のアドバイスをしたり、互いに協力しあうような場面は、支援スタッフが対象者の得意とする作業を依頼する支援を行った時にみられた。一方、支援スタッフによる指示的な言葉かけが中心となる支援では、料理活動は順調に継続するものの発話があまりみられなかった。参加者が本来持っている能力を生かしきれない支援や、参加者の視界に入らない位置からの支援は、料理活動の停滞につながった。個人に合わせた支援を行うことで料理活動が順調に継続し、その延長上に参加者の自発的な行動や発言がみられ、それらが料理活動による認知症高齢者の自信の回復や、役割の再認識につながることが示唆された。

  • 熊谷 奈々, 三成 由美, 宮原 葉子, 入来 寛, 御手洗 早也伽, 能口 健太, 下川 愛子, 新原 千央, 向坂 幸雄, 徳井 教孝
    セッションID: 2B-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】2020年はCOVID-19の感染防止を考慮し、学生の安全・安心を目指した調理実習授業を検討し取り組んできた。その教育効果について評価したので報告する。

    【方法】対象は、「実習・食事設計と調理Ⅰ」を履修する大学1年生215名、授業形態は、4月の緊急事態宣言下では1)web(スライド) 、解除後の6月より2)WEB(スライド)+対面実習、3)WEB(示範の動画)+対面実習、4)対面のみ(示範+実習)、5)試験(筆記・実技)等を実施した。WEB(スライド)は、作り方や調理のポイント等教科担当者が録音して配信、WEB(示範動画)は、ビデオカメラで撮影し配信。対面実習の実習室入室前は検温後、アルコール消毒(調理靴、ロッカー、手指)、示範室、実習室、試食室内は火災防止のため次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒。実習は対面防止に配慮し、手袋を使用した。試食は使い捨て食器を使用し、パーティション等を配置した。授業評価の内容は、授業形態について理解度、興味、積極的な学び、授業での感動、勉強時間、自主的な調理の取り組みの6項目であり、5点評点法で実施した。 解析は、統計解析ソフトIBM SPSS Statistics ver.22を用いて、χ2検定を行った。

    【結果・考察】4つの授業形態で、WEB(動画)と対面実習を併用した授業は、従来の対面のみの実習方法と比較すると、6項目において有意差はなく、勉強時間については有意な差が認められた。WEB(動画)は学生が継続して何度も見ることができ、対面実習は個人の技術指導ができるためか、WEBと対面実習を組み合わせたハイブリッド型授業はwithおよびafterコロナにおいて教育効果の有用性が認められた。

  • 柴 美佐紀, 小川 麻衣, 根谷 優美香, 物延 緋奈, 廣脇 里咲, 森井 沙衣子, 坂本 薫
    セッションID: 2B-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】練りこしあんは、あずきを煮熟して得た生こしあんに砂糖を加えて練りながら加熱し、調製する。すなわち、あずきと砂糖だけで作られるが、練りあんの品質に影響を及ぼす因子として、あずきの処理方法や加熱方法などについての報告はあるものの、加える砂糖の違いに焦点を当てた報告はほとんど見当たらない。そこで、砂糖の粒度の違いがあんの食味に及ぼす影響について検討するため、ザラメ糖とグラニュ糖を用いて練りこしあんを調製し、実験を行った。

    【方法】粒度の異なる砂糖としてザラメ糖(φ3.5~3.9)とグラニュ糖(φ0.2~0.7)を用い、練りこしあんを調製した。あん粒子内部の全糖量、還元糖量の測定はそれぞれフェノール硫酸法、ジニトロサリチル酸法を用いて行い、また、大学生42名を対象とし、強度(色、つや、香り、甘味、後味)および嗜好性(香り、甘味、後味、舌触り、全体的なおいしさ)についてVAS法で官能評価を行った。さらに、練りこしあん調製時の加熱操作の影響を検討するため、加熱して調製したあんと加熱せずに調製したあんの比較を行った。

    【結果および考察】あん内部に糖が浸透しているか否かを確認するために、あん表面、内部の糖量について測定を行った結果、あん粒子内部の還元糖量は加熱したあんで有意に多くなった。また官能評価を行った結果、ザラメ糖あんとグラニュ糖あんにおいて、色および甘味の強度に有意差が認められた。これらの結果より、練りこしあんの加熱操作により、あん内部に糖は浸透すると考えられ、粒度の異なる砂糖をあんに使用することにより、あんの食味に質的差異をもたらすことが示唆された。

  • 野村 知未, 古谷 規行
    セッションID: 2B-7
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】小豆を含めた雑豆類の摂取量は,近年減少傾向にある。小豆の摂取向上には「おいしく小豆を調製する」ことが求められる。そのためには小豆のおいしさに関わる要因の制御法を構築することが重要である。そこで本研究では,小豆の食味に関わるテクスチャーとにおいに着目し,それらが食味に及ぼす影響について検討した。

    【方法】試料は,きたろまんおよび大納言小豆の京都大納言とした。小豆を煮熟後,練り時間の異なる餡を調製し,それらの餡粒子およびデンプン等を含めた粒子の大きさを光学顕微鏡および粒度分布測定機にて測定した。餡へ副材料を添加した際のにおいの変化は,におい識別装置(FF-2020,SHIMADZU)を用いて測定し,データを付属のソフトウェアにて絶対値表現解析で評価した。また,調製した餡のテクスチャーおよびにおいについて官能評価も行った。

    【結果・考察】小豆は,煮熟後の練り工程によって餡粒子が崩壊しでんぷん粒が流亡することで平均粒子径およびメジアン系が小さくなり,官能評価においてもざらつきが小さいと評価された。また,同一品種の小豆であっても百粒重が大きいものほど餡粒子は大きく,小豆の大きさも餡のテクスチャーに関与することが示唆された。一方で,餡のテクスチャーに関与するざらつきへの影響は,餡を構成する粒子の大きさだけでなく,餡の水分量や副材料の添加によって変化した。特に,脂質含量の高い副材料の場合,粒子径に変化がないにもかかわらずざらつきが小さいと評価された。これは,餡粒子やその他粒子を油脂がコーティングすることが要因と考えられる。また,副材料によるにおいの変化は,乳製品による変化が最も大きいことがにおい識別装置測定および官能評価より明らかになった。

  • 劉 尭?, 長尾 昭彦, 小林 三智子
    セッションID: 2B-8
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】近年、お茶中の苦味物質であるカテキンやカフェインなどに関する研究が多くみられる。しかし、実際に抽出したお茶中の苦味を変化させ、味と風味に与える影響についての研究はほぼない。本研究では、煎茶中の苦味が煎茶の味に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、抽出した煎茶の味における苦味の影響を中心に検討した。

    【方法】試料は5種類の煎茶とし、抽出方法は水出しを用いた。味認識装置を用いて、抽出した煎茶を分析し、それぞれの固有味を把握した。苦味を調整するために煎茶の苦味物質の1つであるカフェインを添加し、HPLCを用いて煎茶中のカフェイン含量を分析した。3段階のカフェイン含量の煎茶を試料として、TI法、TDS法および TCATA法を用いて、官能評価を実施した。味認識装置のデータ、官能評価の結果および試料中の苦味の量を比較して、総合的に考察した。

    【結果】味認識装置を用いて、5種類の煎茶を分析した結果、煎茶の品種、火入れ温度および火入れ時間により、特に渋味とうま味の変化が大きいことが認められた。HPLCにより、5種類の煎茶中のカフェイン量を測定した結果は13.8 mg/100 ml〜19 mg/100 mlであった。順位法による官能評価の結果、苦味の強さにより煎茶の濃さが変わることが明らかになった。3段階のカフェイン含量の煎茶をTI法で評価したところ、カフェイン含量が多いものでは(多いものほど)苦味を一番強く感じる時点が遅くなった。煎茶の苦味の強さによって、後味に影響を与えた。苦味が強くなると、うま味を感じるのか遅くなり、さらに、うま味を感じ難くなった。

  • 石田 千津恵, 島本 敏, 島本 整
    セッションID: 2B-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】抗生物質の使用による薬剤耐性菌問題に対して,ヒトと動物の垣根を超えた世界規模でのワンヘルス・アプローチの推進が求められる。薬剤耐性菌は,抗生物質が効かないまたは効きにくい細菌のことで,医療機関や畜水産業,食品など様々な環境に存在する。食肉や魚介類だけでなく野菜の汚染も報告されており,特に野菜や魚介類は,生で喫食する機会も多いため,ヒトの体内で薬剤耐性が広がり,新たな薬剤耐性菌の誕生につながる恐れもある。このリスクを明らかにすることは食品衛生上極めて重要である。薬剤耐性菌が抗生物質に耐性をもつメカニズムの一つに,β-ラクタマーゼ等の酵素による抗生物質の不活化がある。本研究では鶏肉を対象に,広域β-ラクタマーゼである基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)と,カルバペネムを含むほとんどのβ-ラクタム薬を分解するカルバペネマーゼを産生する腸内細菌科細菌(CPE)の分布を調査した。

    【方法】市販の国産鶏肉を部位別に採取し,BPW(緩衝ペプトン水)で処理後,前培養および本培養した。本培養培地にはアンピシリン100 µg/ml添加マッコンキー培地を用いた。一般生菌数測定,ESBL産生腸内細菌科細菌とCPEのスクリーニング選択分離を試みた。

    【結果・考察】ムネ肉,ササミ肉,モモ肉,ハツ,砂肝,手羽肉,レバーにおいて103〜106 CFU/gの一般生菌が存在していた。特に砂肝においては,106 CFU/gと他の部位に比べ多い傾向であった。ESBL産生腸内細菌科細菌はいずれの部位からも確認され,CPEはムネ肉,ササミ肉,モモ肉,手羽肉に確認された。今後は,生化学試験および遺伝子解析を実施し,食品由来の薬剤耐性菌の解明に取り組む。

  • 島田 玲子, 髙村 夢衣, 上野 茂昭
    セッションID: 2B-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】サラダチキンとは,薄い味付けでやわらかい食感を持つ鶏むね肉の加工品である。本研究では,サラダチキンのイメージや喫食状況をアンケート調査により明らかにし,また,家庭での調理を想定して家庭に常備され,肉の軟化効果が期待できる調味料を添加したサラダチキンを調製して物性と官能特性を比較した。

    【方法】大学生を対象として,2019年6月〜10月にかけてWebアンケート(Googleフォーム)により属性(4問),サラダチキンの認知度とイメージ(10問),サラダチキンのおいしさの評価と喫食状況(15問),家庭でのサラダチキンの調理(8問)の計37問を尋ねた。実験では,鶏むね肉に対して砂糖2%,水2%,塩0.7%を添加した標準試料と,醤油,酒または酢添加の計4種の試料を調製した。調味料は塩分濃度,水分量が同じになるよう添加し,加熱には炊飯器を用いた。クリープメータによる破断強度解析および官能評価により,物性と嗜好性を評価した。

    【結果】アンケート調査から,サラダチキンは広く認知されており,「高タンパク」「低カロリー」などの健康を意識して食べられている食品であることが分かった。家庭で手作りしたことがある人は22%にとどまった。加熱前後の重量変化を示すドリップ率が低く,保水力が最も高いものは醤油試料であった。破断エネルギーが最も小さく,実験者らによる官能評価でも最もやわらかいと評価されたものは標準試料で,調味料添加による軟化は認められなかったが,調味料を加えることにより鶏肉の臭みが弱まった。消費者パネルによる官能評価により,シンプルな材料で低価格であるという手作りサラダチキンの良さが,市販品以上に受け入れられるということが分かった。

  • 竹越 七海, 三嶌 太郎, 山崎 英恵, 伏木 亨
    セッションID: 2B-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】牛肉における格付け評価は、脂肪交雑量が多いほど高く評価される。一方、格付け評価と嗜好性が必ずしも一致しないという報告も見られる。本研究では、等級の異なる牛肉を官能評価により比較・評価し、等級の低い牛肉のおいしさを引き出す調理法やその要因を解析した。

    【方法】1.調理法の違いによる牛肉(2等級・5等級)の味わいを比較した。10〜60代の男女(湯通し30名、焼き18名)を対象とし、同一条件で調理した2等級と5等級の黒毛和牛ロースについて摂取し評価した。調理法は80 度5秒間湯通し、200度(表面40秒、裏面20秒)焼きの2種でそれぞれポン酢ジュレとともに供した。味わいの総合評価の指標として、Visual Analog Scale (VAS)を用いた。2.湯通しした牛肉のおいしさに関わる要因を解析した。10〜60代の男女86名を対象とし、80度5秒間湯通しした2等級と4等級の国産交雑種ロースをそれぞれポン酢ジュレとともに供した。評価指標として、VASおよびおいしさを構成する要素「報酬効果、食文化、情報」からなる15の質問票を用いた。解析では因子付加量の大きい質問項目について重回帰分析を行った。

    【結果】1.VAS評価より、湯通しでは2等級が5等級を有意に上回り、焼きでは5等級が2等級を上回ったが有意な差は認められなかった。よって、80度5秒間の湯通しは等級の低い牛肉のおいしさを引き出す調理法であることが分かった。2.VASの平均値は2等級が4等級より有意に高くなった。重回帰分析の結果、2等級と4等級ともに報酬効果の要素が総合評価に有意に影響していた。一方、情報(高級感)の要素は4等級のみに有意な影響が検出された。以上より、味わいのみを考えると2等級の方が評価が高いことが示された。

  • 村上 穂乃佳, 町澤 まろ, 水落 亮平, 佐々 卓哉, 角野 充奈, 冨永 美穂子
    セッションID: 2B-12
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】食品の安全性を確認する際,味や香りの他に,外観は重要な指標のひとつであると言えるが,科学技術的なアプローチで想像できない外観に変えられた分子料理が注目されている。人は栄養やおいしさを求めて日々食選択をしており,その比重は個人によって異なる。分子料理のような新しい料理の選択に際しても,個人特性が影響していると考えられる。そこで本研究では,新しい料理の認知度の把握を含め,分子料理の外観に対する印象や摂食意欲と個人特性との関連を検討することとした。

    【方法】2020年10月〜11月にかけて,学生を中心とした10代〜70代を対象に,個人特性,新しい料理の認知度,分子料理の印象及び摂食意欲に関するwebアンケートを実施し,306部のデータを解析に用いた。分子料理は,同材料で一般的,エスプーマ(泡状),シート状,エスプーマを凍結させたプリンを調製し,それらの画像をアンケートで使用した。印象及び摂食意欲に関しては性,年代,居住地,価値観等の個人特性別に比較検討を行った。

    【結果・考察】新しい料理に関する59用語の認知度の平均は,27.6用語と5割未満であり,特に20代において認知度が低かった。料理の摂食意欲では,一般的なプリンが最も好まれたが,食材情報の提示や個人特性で違いがみられた。女性,20代,地方圏周辺部居住者に特徴的であった安全志向型は,分子調理により外観を変化させたプリンよりも一般的なプリンの摂食意欲順位が高かったが,情報提示によりその順位が低下した。他方,革新性,技術性,芸術などに価値をおく人や新しい料理に関する用語の認知度が高い人は一般的なプリンを上位に選択しない傾向にあり,分子料理の受容性にはこれらの個人特性と関連があることが示唆された。

  • 設樂 弘之, 小泉 昌子, 福岡 真実, 三尋木 健史, 峯木 眞知子
    セッションID: 2B-13
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】鶏卵は様々な食品に原料として使用されている。これは鶏卵が持つ物性改良機能が食品をおいしくするためである。卵、特に卵黄の風味がおいしさを増強させることも重要な理由である。しかし、卵黄のおいしさが関与する成分は特定されていない。そこで卵黄を分画し、それぞれの分画成分がどのような風味の特徴を有するのかを明らかにする。

    【方法】卵黄に蒸留水を加えて遠心分離し、沈殿したHDLを主とするグラニュール画分を得た。上清のプラズマ画分をさらに冷凍することにより、LDL画分を分離し、残りを水溶画分とした。それぞれの3画分の成分を凍結乾燥した。卵白のみと卵白に3画分を加えた炒り卵を4種、それに生卵黄の添加量を変えて加えたもの2種の計6種を調製した。炒り卵は、サラダ油は3%,塩は0.3%用いた。官能評価に用いた用語は、事前に予備実験を行い、卵黄の風味を表す調査用語を12用語抽出した。専門パネラー10名により、6種の試料について、5段階評点法による分析型官能評価を行った。試料は、一人当たり常温で喫食量20gとした。得られた結果について主成分分析で解析した。

    【結果】いりたまごに用いた用語は 「硬さ」、 「弾力」、 「もそもそ(残る感じの強さ)」、 「ざらつき」、 「水っぽさ」、 「硫黄臭」 、「魚臭」、「塩味」、「苦味」、「うま味」、 「コク(味の濃さ)」、 「油脂感」とした。その結果、LDL画分試料と卵黄を多く含んでいる2種試料で「うま味」、「コク(味の濃さ)」、「油脂感」が「強い」と評価された。水溶画分試料では、「塩味」や「苦味」が強いと評価された。これらのことから、LDL画分成分が、卵黄のコクなどのおいしさに関連することが明らかになった。

  • 稲垣 瑠奈, 中野 優子, 風見 由香利, 神保 聡子, 高橋 美奈子, 浦田 貴之, 佐藤 瑶子, 早川 文代
    セッションID: 2B-14
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】油脂の風味は油脂を用いた調理品の品質に大きく影響する。既報にて,植物油は原料や加熱時間の違いにより風味の質,強度,持続時間が異なることが示されたが,油の風味の特徴が,実際の揚げ調理においてどのように感じられるかの研究は少ない。そこで本研究では,揚げ調理のモデルとして食パンを用い,原料及び加熱時間の異なる植物油が揚げ物の風味に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】4種の植物油(こめ油,なたね油,パーム油,大豆油)を,180℃で0時間,5時間加熱した合計8種類を揚げ油とした。家庭用電気フライヤーで1.5 cm×2 cm×2 cm角の食パンを揚げ,試料とした。訓練パネル12名が,風味に関する10項目について,口中で風味評価を行った。評価には経時的に感じられた項目全てを選択するTemporal Check‐All‐That‐Apply(TCATA)法を用いた。咀嚼は評価開始5秒後,嚥下は30秒後とし,評価時間は180秒とした。

    【結果・考察】いずれの油で揚げた試料でも「香ばしい」は口に入れた直後から選択され30~60秒後には低下した。「胸焼け臭」は嚥下以降に選択比率が高くなる傾向にあった。5時間加熱油では,こめ油は,他の油に比べ,「甘い香り」が評価時間全体を通して,「香ばしい」は評価後半で有意に選択され,甘さと香ばしさの持続が特徴的だった。なたね油は,「魚」の臭いが特徴的であり,0時間加熱油では咀嚼開始から嚥下前後で,5時間加熱油では全体を通し選択比率が高かった。5時間加熱パーム油では,評価全体を通し,有意に「ペンキ」の選択比率が高く,加熱によりペンキ臭が強くなることが示唆された。以上のように揚げ油の原料,加熱時間の違いにより,各々の試料の風味に異なる特徴が確認できた。

ポスター発表
  • 谷口 明日香, 横後 美貴, 近藤 美乃里, 蒲 詩織, 板垣 紗彩, 小林 理恵
    セッションID: P-1
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】大麦は多くの健康機能性が報告されているが、グルテンを形成しないため、製粉された大麦粉のみを用いた膨化製品の製造は困難であるとされている。我々は大麦の健康機能性を実生活で活用するために、大麦粉を用いた各種膨化製品の加工利用法を検討してきた。本研究では、家庭でも容易に調理できる大麦粉蒸しパンの調製条件を提案するために、膨化基質となり得る起泡卵白を加え、その品質と嗜好性を評価した。

    【方法】小麦粉蒸しパン(対照)と大麦粉蒸しパンそれぞれの配合は、予備実験をふまえて各粉100 gに対して、BP(3g)、卵白(60 g)、卵黄(40g)、上白糖(45 g)、サラダ油(12g)とし、換水値は小麦粉で130%、大麦粉で155%となるよう加水により調整した。蒸しパンに配合する起泡卵白のオーバーラン(OR)は0,150,300%の3区分とし、その気泡状態は実体顕微鏡にて観察した。プリン型(120 mL)に流し入れたバッター(50g)は電気蒸し器で20分間加熱し、放冷後、体積(菜種法)を測定した。品質と嗜好性は、破断特性および官能評価により評価した。

    【結果・考察】起泡卵白を配合すると、小麦粉と大麦粉の各蒸しパンの体積に有意な差がなくなった。また配合卵白のORが高くなると、いずれの蒸しパンも破断歪率が高く、破断エネルギーが低下し、よりしなやかでソフトな品質になることが示唆された。蒸しパン表面に凹凸が生じ蒸しパンらしい形状が損なわれるOR300%卵白配合を除き、各大麦粉蒸しパンを官能評価した結果、香り、味、食感、総合評価において、OR150%卵白配合蒸しパンは、小麦粉蒸しパンと同程度に好まれ、小麦粉の代替利用条件として適していると判断した。

  • −白神こだま酵母・とかち野酵母・サフ酵母の比較−
    千 裕美, 浦原 麻紀, 熊谷 亜里紗
    セッションID: P-2
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】パン酵母(Saccharomyces cerevisiae)の菌株の種類は様々あるが、国内で単離した乾燥天然酵母の比較を行った研究は少ない。そこで本研究では、白神こだま酵母、とかち野酵母に着目し、外国(フランス)産酵母であるサフと発酵力、膨化力、食味について比較し、それらの特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】発酵力試験は、酵母1g、10%砂糖液25mLを35℃、55℃、75℃の温度帯で反応させ、発生する気体を水上置換で捕獲し、体積を計量することで行った。膨化力は、所定の方法で製造したテーブルロールの重量と体積(菜種法)を測定し、比容積を求めることで測定した。食味は、製造したテーブルロールを評点法を用いて官能評価を行う(n=17)ことで評価した。

    【結果・考察】最も汎用的な発酵温度である35℃における発酵力を3つの酵母で比較すると、サフ酵母が時間経過を問わず最も大きく、とかち野酵母が次に大きく、白神こだま酵母が最も低かった。55℃では発酵時間10分までは発酵力が持続したが、その後発酵力は停止した。一方、75℃における発酵力は、3つの酵母とも55℃よりも若干大きな傾向があった。 製造したパンの膨化力(比容積)は、サフ酵母が最も大きく、2位はとかち野酵母、3位は白神こだま酵母(P<0.05)であった。また、膨らみ方が縦に膨らむもの(サフ酵母)と横に膨らむもの(とかち野酵母)があった。食味は、有意差は見られなかったものの、キメ、味、総合評価において、白神こだま酵母で製造したパンの評価が最も高かった。これらの結果より、国産乾燥天然酵母は外国産酵母と比較すると85分以内の発酵力は劣る傾向が見られるものの、製品の食感や味については好感度の高い傾向があることがわかった。

  • 高崎 禎子
    セッションID: P-3
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】信州産ソルガムきびの実は,小麦アレルギーやグルテン不耐症患者への小麦代替食材として注目されている。また、品種によっては、ポリフェノール,GABA,食物繊維などの機能性成分を多く含んでいるものもあり、健康食品としての活用も期待されている。しかしながら,グルテンを含まないためにパン等の膨化食品の製造には多くの問題点がある。本研究では、信州産ソルガムきびを日常的に食品として利用するために,二品種のソルガムきび粉を用いて、基礎特性および製パン条件の検討を行った。

    【方法】ミニソルゴーおよびTDNソルゴーを製粉し、粒子径分布、糊化特性などを分析した。パンの調製は、ソルガムきび粉100gに対して、砂糖10g、塩2g、ドライイースト3g、油4g、水 (40°C) 100gの配合を基本とした。また、必要に応じてヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を粉に対して0.7%添加した。材料を混ねつ後、分割、発酵、焼成(200℃)した。パン生地の発酵中のガス発生量をファーモグラフにより測定した。パンの比容積及びテクスチャー特性を測定した。

    【結果】ミニソルゴーおよびTDNソルゴーの粒子径分布は、両者とも強力粉よりも平均粒子径が大きかった。示差走査熱量計で糊化特性を分析した結果、二品種ともにピーク温度、ピーク開始温度、終了温度に明確な差はみられなかった。低温側のピークは、二品種とも71°C付近で、強力粉の値に比べ高温側にあり、糊化しにくい性質であると予想された。製パン時のソルガムきび粉生地の発酵中のガス発生量は、二品種ともに2時間前後で徐々に低下し、強力粉生地とは異なる挙動を示した。HPMCを0.7%添加した場合は、パンの比容積は無添加に比べ増加したが、さらに、製パン条件の検討が必要である。

  • 寺本 あい
    セッションID: P-4
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】近年、食物アレルギーをもつ者が増加傾向にあり、アレルゲンフリー食品の需要は高い。本研究は、微粉大豆粉を使用した三大アレルゲン不使用パンの開発を目的とし、使用するでんぷんを主成分とする素材(以下、澱粉素材)について検討した。

    【方法】

    (1) 大豆粉パン材料:微粉大豆粉、澱粉素材(片栗粉、米粉、コーンスターチ、コーンフラワー、タピオカ澱粉)、砂糖、食塩、ドライイースト(日清フーズ)、骨格形成剤(HPMC:メトローズ)、食用調合油(サラダ油)、水

    (2)生地の調整方法:①水、調合油以外の材料→水→調合油の順に入れ、電動ミキサー(メランジュールロボ:貝印)で撹拌する。②①をパン型(6×6×6㎝)に60gずつ入れ、40℃で45分間発酵させる。③200℃で7分間+190℃で9分間焼成する。

    (3)評価方法:①「パン用酵母試験法」(日本イースト工業会)による低糖生地膨張力試験 ②菜種法によるパンの体積測定 ③パン断面の観察 ④ポータブル色差計(アズワン)による製品断面の色差測定 ⑤クリープメータ(YAMADEN)による破断強度及びテクスチャー解析

    【結果・考察】生地膨張力は、コーンスターチ>タピオカ澱粉>米粉>片栗粉>コーンフラワー>小麦粉の順であった。焼成後、小麦粉パンに比較的近いスポンジ状の構造であったのは、片栗粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉であった。大豆粉パンでは、生地のかたさが低いほど、焼成前、焼成後ともに膨化性が高い傾向を示した。付着性は、発酵前はどの大豆粉生地も小麦粉生地より低い値を示したが、焼成後のパンはコーンフラワー>タピオカ澱粉>米粉>小麦粉>コーンスターチ>片栗粉の順であった。破断応力は、歪率20%では小麦粉パンが高値だが、歪率80%では大豆粉パンの方が高値となった。

  • 望月 美佳, 岡部 知恵子, 大澤 俊彦
    セッションID: P-5
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
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    【目的】ワイルドライスは北アメリカで広く栽培されているイネ科マコモ属の植物である。この植物は古くから先住民族の食糧としてしょくされてきた。これまでの研究から、ワイルドライスは白米と比較してたんぱく質、食物繊維、ミネラルなど多くの栄養素が豊富に含まれていることが報告されている。しかし、日本ではほとんど市場に出回っておらず、生理機能の研究もほとんど行われていないのが現状である。そこで、本研究では、ワイルドライスの実用化を目指しワイルドライス粉パンを創作し、ワイルドライス粉パンの物性を解析するとともに、機能性評価として血糖値上昇への影響を検討した。

    【方法】小麦粉パン、玄米粉パン、ワイルドライス粉パン創作した。比容積は菜種法により測定し、クリープメーターを用いて物性(かたさ、凝集性、付着性)を測定した。測定結果は自動解析装置を用いて解析し、平均値と標準偏差を算出した。また、小麦粉パン、玄米粉パン、ワイルドライス粉パンを摂取した際の0分〜120分間の血糖値を測定し、血糖値上昇曲線面積を算出した。

    【結果】比容積は小麦粉パンが有意に大きく、重量はほとんど同じであった。物性測定では、ワイルドライス粉パンが有意に硬かった。これは、小麦粉含量が小麦粉パンよりも20%少なく、ワイルドライス粉パンに含まれるでん粉が膨化に影響したことが関与したと推測した。血糖値上昇曲線面積値はワイルドライス粉パンが最も低く、ワイルドライス粉に含まれる成分が血糖値上昇抑制に関与している可能性が示唆された。

  • 樋口 かよ, 橋本 卓也, 長沼 孝多, 小嶋 匡人, 小松 正和, 木村 英生, 有泉 直子, 望月 和樹
    セッションID: P-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/09/07
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】山梨県の小麦奨励品種に指定されているゆめかおりは、今後増産が見込まれる硬質小麦である。本研究ではゆめかおり粉の新たな活用を目指すため、全粒粉の成分分析や製パンおよび製麺適性について検討した。

    【方法】ゆめかおり粉の一等粉および全粒粉について、水分、たんぱく質、食物繊維、灰分量の測定、ファリノグラフおよびアミログラフ測定、走査型電子顕微鏡による観察、粒度分布測定等を行った。加工への検討では、製パン試験および製麺試験を行った。製パン試験は、ホームベーカリーを用いて食パンの試作を行った。食パンは、ブレンド粉(全粒粉を一等粉に対して20〜100%まで20%ずつ混合した粉)、ショートニング、グラニュー糖、脱脂粉乳、食塩、冷水、ドライイーストを用いて自動焼成した後、ふくらみの評価のためノギスで高さを測定した。製麺試験は、ブレンド粉、食塩、冷水を使用し、試験用製麺機を用いて行った。麺は茹で操作後、切断試験により物性を評価した。

    【結果・考察】全粒粉では一等粉と比較して、食物繊維と灰分量が多い結果となったため、機能性食品素材としての活用が期待できると考えられた。食パンを試作して高さを測定した結果、全粒粉20%の条件で最も高くなり、混合割合が増えるほど低くなる負の相関(R2=0.99)が認められた。食味については、全粒粉80%、100%で風味が強いとの意見が得られた。一方で、独特の風味が良いとの意見も得られた。製麺試験では、全粒粉割合40%までの切断試験結果に有意差は認められなかったため、ブレンド割合40%程度であれば、食感を変化させることなく使用できることがわかった。山梨県産小麦全粒粉は、ブレンド割合の検討によりパンや麺等へ活用できることが示唆された。

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