抄録
【目的】
市場には有機栽培による野菜が出回っているが、慣行栽培との比較を行うことで有機栽培によるほうれん草の性状を明らかにすることを目的とした。
【方法】
ほうれん草の性状を生の場合とゆでた場合の葉の部分について比較した。また、保存による変化も検討した。生の場合は葉の厚さ、はり具合、色、水分、組織観察、ゆでた場合は葉の硬さ、色、組織観察、官能検査から調べた。色は色差計によるa値、組織は断面及び裏表皮を取り除いた海綿状組織を走査電子顕微鏡により観察、生の葉のはりやゆでた場合の葉の硬さはクリープメータによる破断強度から求めた。ほうれん草をゆでる条件は、食塩を入れない沸騰水に入れ、再沸騰後30秒加熱し、水での冷却を3回繰り返した。水切り条件は冷却後のほうれん草の重量の約90%とした。保存による比較は採取したほうれん草を4℃で7日間保存したものを試料とした。
【結果】
生の場合、有機栽培による葉は慣行栽培に比べて厚く、緑色は薄く、水分量は少なく、柵状組織は整然としていた。保存により有機栽培、慣行栽培のいずれも葉のはりはなくなっていったが、有機栽培のほうれん草の方が慣行栽培に比べてはりを保っていた。有機栽培では保存による葉の色の変化がほとんどなかったが、慣行栽培の場合は緑色が薄くなった。ゆでた場合の葉では、生の場合に比べて保存による有機栽培と慣行栽培の違いが顕著であり、有機栽培のほうれん草では保存しても緑色や歯ごたえを保ち、組織も保持していた。また、官能検査では有機栽培と慣行栽培によるほうれん草は有意に識別され、有機栽培の方が有意に色や硬さ、総合的に好まれた。