日本調理科学会大会研究発表要旨集
創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
セッションID: 1D-a3
会議情報

口頭発表
アルコールブライン凍結マアジは食卓の刺身素材として有望か?
*原田 和樹前田 俊道小田 哲也櫻井 大志幸 淳彦福田 裕乾 悦郎渡辺 康一郎伊藤 信夫水上 洋一清家 一徳坂本 時裕酒井 拓宏
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録


【目的】
 我々は、マアジにおいてアルコールブライン急速冷凍法が、従来の冷凍庫による緩慢凍結法よりも品質が優れていることを示してきた。今回は、アルコールブラインで凍結したマアジが、食卓の刺身素材として有望かどうかを、物性・生化学的観点と共に官能検査の観点から検討した結果を報告する。
【方法】
 マアジは豊後水道で捕獲・蓄養したものを、海水アイススラリーを添加した海水中で活け〆して、-30℃、-25℃、-20℃の60%エタノールを入れた冷凍機でラウンドのまま急速凍結した。比較実験として、緩慢凍結は一般的な冷凍庫を用いて行い、下氷鮮魚(未凍結)は保蔵後1日目の試料を用いた。各凍結試料は冷凍庫で1か月並びに3か月保蔵後に解凍して、K 値、チオバルビツール酸(TBA)値、pH、破断強度ならびに盲検定による官能検査に供した。
【結果】
 アルコール凍結において、試料の一部には、解凍後肉にアルコールの残存が最高100ppm検出したが、官能検査では臭いの問題は発生しなかった。凍結区のK値はいずれも20%以下であり、pH、脂質酸化、破断強度の結果からも刺身食材として利用可能であることを確認した。一方、官能検査の結果、アルコール凍結試料のほうが、色、匂い、旨み、歯ごたえ、総合評価とも緩慢凍結法よりも良いスコアを示した。しかしながら、破断強度や核酸関連物質のイノシン酸(IMP)の物性・生化学的評価との相関は示さなかった。以上の結果から、アルコール凍結マアジは、従来の冷蔵庫での凍結よりも、刺身食材として優れていることが示唆された。本研究は、「平成18年度先端技術を活用した農林水産研究高度化事業」の「現場連携支援実用化促進型研究」の一環として実施された。

著者関連情報
© 2007日本調理科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top