【目的】 アンネ・フランク(1929~1945、昭和4~20)著『アンネの日記』最後の食物関連事項となった1944年7月8日(土)のグリーンピースを取り上げ、その記述内容「内側の薄皮をきれいにむくと、グリーンピースの莢って、ビタミンには富んでるし、おまけにとってもやわらかく、おいしく食べられるんです。」および「たんに豆だけ食べるのにくらべて、食べられる量が三倍にもなる」(深町眞理子訳、文藝春秋社)について検証した。 【方法】 『アンネの日記』日本語本、英語本、オランダ語本の〈完全版〉および〈研究版〉の当該日グリーンピース記述の内容を比較した。また、グリーンピースの廃棄率および栄養成分量として一般成分、ビタミンC(HPLC法)、食物繊維(プロスキー変法)を測定し、薄皮を剥がしたグリーンピース莢と無処理の莢を茹でた試料の食味について官能検査(自由コメント)を行い、レオナーによる最大荷重を測定した。 【結果】 原稿によっては(〈研究版〉C原稿)ビタミンの記述が削除されていた。グリーンピース(100g)を豆部と莢部に分け、莢内側の薄皮を剥がした結果、豆100mLと薄皮無莢200mLが得られらことから、アンネが記した「食べられる量が三倍」とは容積を指していたことがわかった。薄皮を剥がした莢の一般成分のタンパク質、脂質、炭水化物、灰分および食物繊維総量はいずれも豆に比べて低かったが、水分含量とビタミンC含量は高かった。官能検査の結果、薄皮を剥がさない莢(レオナー最大荷重11.8N)は「スジばっている」、「噛み切れない」、「口に残って飲み込めない」など摂取に適さないと評価されたのに対し、剥がした莢(3.7N)は「シャキシャキしている」、「噛み切りやすい」、「サヤエンドウのよう」など摂取可能であると評価された。