日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成23年度日本調理科学会大会
セッションID: A2a-10
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ポスター発表
さとうきび抽出物による鮭の退色抑制効果
*岸 映里塩見 和世水 雅美河合 俊和佐藤 彩加宮下 裕幸池田 剛菊崎 泰枝
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抄録

【目的】鮭の特有の鮮やかな肉色は、酸化により退色しやすい性質をもち、鮭の加工、流通においてしばしば問題になる。そこで、さとうきびからポリフェノール類を抽出した食品素材である「さとうきび抽出物」を鮭の退色防止に利用できないか検討を行ったところ、さとうきび抽出物0.1%を含む調味液に浸漬した鮭の切り身の色は5℃保存で数日間保たれたという結果が得られた。本研究は、さとうきび抽出物のこの退色抑制作用のメカニズムを明らかにすることを目的とした。
【方法および結果】退色抑制作用は、抗酸化力測定法のひとつであるβカロテン退色法を参考に、鮭の肉色の主体であるアスタキサンチンの吸光度の変化を測定することで評価した。その結果、アスタキサンチンは脂質の共存により著しく退色し、その退色はさとうきび抽出物によって抑制された。一方、アスタキサンチンにさとうきび抽出物を共存させただけではアスタキサンチンの顕著な色の保持効果が認められなかった。すなわち、さとうきび抽出物は直接的にアスタキサンチンの退色を抑制するのではなく、さとうきび抽出物が共存する脂質の酸化を抑制することでアスタキサンチンの退色を抑制していることが示唆された。ORAC(Oxygen Radical Absorbance Capacity)法を用いてさとうきび抽出物の抗酸化力を調べたところ、ある程度強い効力を示した。さらに、さとうきび抽出物から得られた7種の単離化合物についても抗酸化力を評価したところ、フェノール構造をもつ5種の化合物にORACが認められ、これらの化合物が鮭の退色抑制効果に関与している可能性が示唆された。

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© 2011日本調理科学会
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